茶芸と茶道における諸要素 : 中国茶芸の歴史、文化、習慣、特徴と日本茶道の型・気・美・禅

書誌事項

タイトル別名
  • Various Elements of Tea as Art and Tea as Way : Characteristics,Customs,Culture, and History of Chinese Tea Art,and the Form, Atmosphere, Beauty, and Zen in the Japanese ‘Way of Tea’
  • チャゲイ ト チャドウ ニ オケル ショ ヨウソ チュウゴク チャゲイ ノ レキシ ブンカ シュウカン トクチョウ ト ニホン チャドウ ノ カタ キ ビ ゼン

この論文をさがす

抄録

「茶芸」は、中国の茶文化のうちで秘やかに育まれてきたものである。古来飲茶は渇きの癒し、精神高揚、友との交わり、縁結びなど「楽」という文化的要素として親しまれてきたが、茶芸の命は、良い茶、好い水、佳い器という基本的要素によって基礎付けられている。

それに対して、日本の「茶道」は「楽しみ」という要素に否定的であるように見受けられる。即ち「茶の湯によって精神修養をし、交際礼法を究める道」として仕上げられてきたからである。より具体的には、茶道は型、気遣い、美術、禅宗などを重要な要素に大成されたのである。

中国の茶芸はいつも「良い茶」と「好い水」と「佳い器」を強調し、楽しい「芸」として実践されてきた。茶芸は飲茶の外面を捉えて規定する姿勢が強い。それに対して、茶道は「もの」を通じて日本人の内面、即ち精神的構造を理想的な境地にまで高度化する傾向が強い。

このように概観するなら、茶芸を中国人が「身心快楽」を優先的に味わう楽しみのお茶、茶道を日本人が「心身苦寂」を究めるような嗜みのお茶と考えることができるだろう。この二つのお茶には、それぞれ「楽」と「苦」、「快」と「寂」の世界が対照的に展開されているのである。

「快楽」主義的な飲茶からは、「客来敬茶」(客を茶でもてなす)、「以茶養身」(茶で体を癒す)という茶芸が派生し、精神修養的な飲茶からは「和敬清寂」、「修身得道」(身を修め、道を得る)を精神とする茶道が生じたと言いかえてもよい。

収録刊行物

  • 日本研究

    日本研究 37 13-53, 2008-03-31

    国際日本文化研究センター

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ