1970-80年代の日本映画における戦没者の喪をめぐる政治学-「ムッちゃん」悲話を手がかりとして-

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タイトル別名
  • The Politics of Mourning of the War Dead in the 1970s and 1980s in Japan:Creation and Reception of the Works and Activities on Mutchan’s Tragedy
  • 1970-80ネンダイ ノ ニホン エイガ ニ オケル センボツシャ ノ モ オ メグル セイジガク : 「 ムッ チャン 」 ヒワ オ テガカリ ト シテ

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抄録

1970年代に入ると太平洋戦争における子どもの喪失体験を扱った映画が製作され, 親子映画を中心に次々と公開された. 観客の情動的な反応や戦没者の哀悼を伴う表現活動が社会的な空間で行われたことに着目し, 本稿では防空壕の少女「ムッちゃん」に関する作品の生成と受容を辿り, この時期に構築された戦没者の喪に関する言説を分析した. メラニー・クラインの「修復・償い」, フロイト(ジュディス・バトラー)が論じた「罪悪感」という心的概念を参照しながら, 個人の内面を舞台とした喪失と哀悼をめぐる〈政治〉を考察した結果, 子どもの表象を通して, 対抗的な政治勢力が関与する形で, 戦没者に対する国民的な喪が行われたこと, しかし, 1980年代には一転して, 日本人による喪の禁止を通して, 戦争責任を道徳として内面化させる, 国民的な喪に対抗する言説が構築されたことを明らかにした. 最後にムッちゃんの異なる慰霊の可能性についても論じた.

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