「人権啓発」の展開に関する一考察-制度化過程と学習内容の変遷に注目して-

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  • An Analysis of the Manner in which the Human Rights Education for Adults was developed
  • ジンケン ケイハツ ノ テンカイ ニカンスル イチコウサツ セイドカ カテイ ト ガクシュウ ナイヨウ ノ ヘンセン ニ チュウモク シテ

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抄録

本稿の目的は人権啓発の制度化の過程を明らかにして示唆を得ることであり、Ⅰ~Ⅲ期に分けて考察した。(Ⅰ)1965年被差別マイノリティによる政策要求を背景に「同和対策審議会答申」が出され、同和対策事業が開始した。答申は「実態的差別と心理的差別」という概念を用いていたが、徐々に後者が強調され「啓発」が広く実施されるようになる。(Ⅱ)1984年の「地域改善審議会意見具申」が啓発の制度化を決定づけたが、啓発の学習効果は常に疑問視されてきた。(Ⅲ)1995年からの「人権教育のための国連10年」の開始、および同和対策の時限立法の期限切れを前に1996年に最後の「意見具申」が出され、同和問題の教育・啓発の蓄積を生かしつつ人権問題として普遍化してゆく方向が示された。こうした国内外の動向を受けて2000年に「人権教育・啓発推進法」が成立する。学習内容としては、同和問題の知識を注入しようとしたⅠ期、学習方法や効果の模索が続いたⅡ期、扱いうるマイノリティ問題が広がり参加型学習が興隆したⅢ期という特徴がみられた。この結果をふまえて最後に、啓発の制度化の意義と限界を考察し、また「実態的差別」について再考する必要性等について提起した。

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