越境する悪態 : ロシア語の被検閲言語、マットの修辞的空間の人類学的考察

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タイトル別名
  • Transnational Obscenities : Rhetorical Space of Russian Unquotable Language "Mat": An Anthropological Study
  • エッキョウ スル アクタイ ロシアゴ ノ ヒケンエツ ゲンゴ マット ノ シュウジテキ クウカン ノ ジンルイガクテキ コウサツ

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抄録

本論文ではロシアのいわゆる非検閲言語層、「マット」を考察し、その使用によって成立する特殊な修辞的空間を一つの発話内行為として再定義する。膨大な語彙からなるマットはロシアにとどまらず、旧ソ連諸国、中国やモンゴルにまで進出し、現地語と混ざり使われている。「マット」はロシアでキリスト教が普及する以前に儀礼の言語として役割していたと推測されており、儀礼のとき以外の使用はタブーであった。キリスト教の普及とともに、マットは邪教の名残として位置づけられ、その日常的使用に対するタブーがさらに強化された。今ではマットは抑圧された怒りを表すための抑圧された表現として常識的に理解されており、この理解はマットに関する数少ない学術的論文でも受けいれられている。本論文ではマットが使われたいくつかの会話と一つのインタビューを分析し、この見解の妥当性に疑問を投げかける。会話の文脈、会話における会話者の役割分但、話し手と聞き手の間の力学に注目することで、マットが作り出す特殊な修辞的空間を明らかにする。最後にマットを理解する新たな構図を提唱し、マットを一つの発話内行為として捉えなおす。

収録刊行物

  • 年報人間科学

    年報人間科学 27 33-53, 2006-03-31

    大阪大学大学院人間科学研究科社会学・人間学・人類学研究室

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