オーステナイト系マンガン鋼の結晶粒度調整

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タイトル別名
  • Grain size control in Austenitic Manganese Cast Steel
  • オーステナイトケイ マンガン コウ ノ ケッショウ リュウド チョウセイ

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抄録

type:Article

The Authors studied influence of inoculation of Ca-Si, Fe-Si and Al on the refinment of grain size in Austenitic Manganese Cast steel. This experiment results are as following (1) The lower casting temperature, the finer grain size is obtained (2) Each inoculation of Ca-Si, Fe-Si and Al results in finer grain size. (3) When inoculated cast steel is quenched after casting, grain size results in coarser or finer. But inoculation of Al causes fewer difference in grain size than that of Ca-Si and Fe-Si. (4) In the case of practical operation, the higher casting temperature, the fìner grain size results if oxidizing and reducing refìning is adopted. But in the case of reducing refining alone, the higher casting temperatur, the coarser grain size results.

高マンガン鋼の性質は,オーステナイト結晶粒度に影響されることが大きく,その製錬作業により,使用目的に適したオーステナイト結晶粒度を有する高マンガン鋼を,製造しなければならない。一般に高マンガン鋼の溶解には,多量の浮遊するノロの発生を伴なうことがあるが,これは石灰で固めるのが得策である。このための損失マンガン量は2%程度であり,主に酸化マンガンMnOとして逃げる。又,本鋼においては,MnS,Mn_3C,セメンタイト,炭化クロムは非金属介在物及び複炭化物として粒界あるいは結晶粒内に見られると云う。M_{nx}O_yなる化合物は,最初溶鉄中において容易に酸化物として溶鉄中に溶解出来ないで,これが凝集して粗大粒となり易しこのような化合物の分散は不均一になることが多く,従って凝固に際しては,この凝集化合物が結晶核となるので,微細な結晶粒とならない。それ故M_{nX}O_Yなる化合物を強力還元剤を用いて凝固直前に還元してやればよいと考えられる。そこで,Ca-Si,Fe-Si,Al等による接種が考えられる。本鋼の組成は,C 1.08%,Mn 12.60%,Cr 1.56%,P O.072%,S O.018%で金相学的に見て,Cr 1.56%とフェライト系元素が幾分含まれているが,Mn 12.6%,C 1.08%とオーステナイト系元素の占める比率は大きく,オーステナイト高マンガン鋼としての組織を左右しない範囲に組成が調整されているものと考えられる。又マンガン鋼の組織図(C-Mn)から解るように溶解方法,冷却過程及び普通の燐入ならばその如何によらず,その組織はオーステナイト初析炭化物あるいはオーステナイトのみから成ると考える。他のトルースタイト,マルテンサイト,フェライト,パーライト等は,一般に析出しないものと考える。又本鋼の性質は,非常に粘くその上相当硬度もあり,又加工硬化の性質も著しく,如何なる鋸でも切断することが出来ないのが本鋼の特徴でもあり,鋳造状態ではもちろん焼入しても同様切断出来ない。以上のような性質から衝撃部分や耐摩耗性を必要とする大型及び小型の鋳物あるいは鋳鍛鋼品として用途がある。

identifier:富山大学工学部紀要,15(1/2)

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