没食子酸エピガロカテキンによるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌に対する抗生物質の抗菌活性増強効果

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タイトル別名
  • Enhancement of antimicrobial activities of antibiotics by combination with epigallocatechin gallate against methicillin-resistant Staphylococcus aureus

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背景 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) は、メチシリンに対してだけではなく、β‐ラクタム系、アミノグリコシド系、ニューキノロン系など多くの抗生物質に対して耐性を獲得している。医療現場では、このMRSAによる院内感染や日和見感染症が深刻な問題となっており、MRSA感染症に対する新しい治療薬や治療方法の開発が急務となっている。 目的 緑茶由来没食子酸エピガロカテキン(EGCg) による、β‐ラクタム系抗生物質のMRSAに対する抗菌活性増強効果については、既にいくつか報告されている。本研究ではこれらの知見を基に、EGCgによるこの増強効果が、どのような種類の細菌に対して現れるか、その細菌種特異性について解析を行った。また、EGCgによるβ‐ラクタム系抗生物質の抗菌活性増強効果に対し、耐性を獲得して増殖するMRSAの出現頻度について解析を行った。 方法 EGCgによる抗生物質の抗菌活性増強効果は、EGCg含有液体培地を用いたMIC法(微量液体希釈法)で試験した。また、EGCgによるこの増強効果から、耐性を獲得して増殖するMRSAの出現頻度については、EGCgとβ-ラクタム系抗生物質を含有する寒天培地上で、MRSAを3日間培養することで解析を行った。 結果 MRSAに対してほとんど抗菌活性を示さなかったβ‐ラクタム系抗生物質が、EGCgと併用することで顕著な抗菌活性を示した。この抗菌活性の増強効果は、β‐ラクタム系抗生物質および黄色ブドウ球菌に対して高い特異性が見られた。EGCgによるβ‐ラクタム系抗生物質の抗菌活性増強効果に対し、耐性を獲得して増殖するMRSAの出現は、3日間完全に抑制され、その効果の高い安定性が確認された。 結論 EGCgは緑茶由来であり、その安全性についてはほとんど問題ないものと考えられる。β‐ラクタム系抗生物質とEGCgとの組み合わせは、MRSAによる院内感染や日和見感染症に対して、高い安全性と有効性をもった新しい医薬品や治療方法の開発に結びつくものと期待される。

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