探究し続ける食事・運動実践 : 糖尿病治療で知ったよろこびをきっかけに
書誌事項
- タイトル別名
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- In search of diet and exercise routine : Triggered by the joy found in diabetes treatment
- タンキュウ シツヅケル ショクジ ウンドウ ジッセン トウニョウビョウ チリョウ デ シッタ ヨロコビ ヲ キッカケ ニ
説明
2型糖尿病者は多様な生活のなかで自己管理を継続しなければならないが,その実践に苦慮することも多い。そのなかで,筆者は自分で決めた食事・運動に専念して減量し続けた研究参加者と出会った。本稿の目的は,その研究参加者の経験の成り立ちを,1年間のフィールドワークと非構造化インタビューを介して記述することである。入院によって食事・運動の仕方が大きく変わったその研究参加者は楽に歩けるようになり,“できる”よろこびに浸った。彼は,その身体をもたらした日々の食事・運動実践を志向し続け,さらなる可能性の拡大を目標にしていった。退院後に主治医たちからやり過ぎを指摘されて食事パターンを見直すことになったが,次第に食の自由を広げつつ,体重増加を判断基準にして安全な減量を成し遂げる探究的な行為に専心していった。彼は,1年間にわたり食事・運動実践のうまいやり方を探究し続け,体重に成果が出るそれらの実践のシステムがうまく作動することに生きがいを見いだして暮らしていた。メルロ=ポンティの思想を参照しつつ,その研究参加者の食事・運動実践への没頭は,彼の身体が治療を契機に始めたそれらの実践を“できる”よろこびや目標として意味づけるようになったことから発生していたこと,毎日の大半を占める日常的な実践のうまいやり方の探究は,生きられた体重によってその成果が確かめられ,次の実践が選択されていたことを考察した。2 型糖尿病者が治療実践をしているように見えても,その人にとっての動機づけにより治療とは別の取り組みをしている可能性があり,病状悪化に至らぬ範囲内で病者の望む実践を見守るという新たな糖尿病医療の可能性が示唆された。
収録刊行物
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- 臨床実践の現象学
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臨床実践の現象学 2 (1), 1-19, 2019
臨床実践の現象学研究会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390572174771850240
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- NII論文ID
- 120006871519
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- DOI
- 10.18910/76181
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- HANDLE
- 11094/76181
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
- CiNii Articles
- KAKEN