臨床心理士指定大学院の心理アセスメントおよび投映法教育のシラバス分析

DOI 機関リポジトリ Web Site オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • Syllabus analysis of psychological assessment and projective methods education at certified clinical psychologist course
  • リンショウ シンリシ シテイ ダイガクイン ノ シンリ アセスメント オヨビ トウエイホウ キョウイク ノ シラバス ブンセキ

この論文をさがす

抄録

本稿では国公立の臨床心理士指定大学院の,心理アセスメントに関する科目のシラバスの記載内容を調査・分析した。その際,心理アセスメントのなかでも,投映法,特にロールシャッハ・テストの教育のあり方に注目した。その結果,近年,若手心理臨床家の「ロールシャッハ離れ(投映法離れ)」が懸念されているが,指定大学院の教育ではむしろ多くの時間を割いて積極的にロールシャッハ・テストをはじめとした投映法が教えられている傾向が明らかとなった。すなわち,若手心理臨床家の「ロールシャッハ離れ(投映法離れ)」は,指定大学院修了後に起こっている可能性が示唆された。この理由として,指定大学院教育のなかで,ほかの心理検査より多くの授業時間を割いているとは言え,それでもなお大学院生を,ロールシャッハ・テストをはじめとした投映法を現場で実践活用できるレベルにまで育て上げるには時間が不十分であることが考えられた。この状況への対応として,大学院修了後の卒後研修によるフォロー・アップ教育の重要性が示唆された。また,指定大学院での心理アセスメント教育について,科目内容から4つの特徴が見出された。すなわち,クライエントへのアプローチとして,①「広く浅くの関わり」を目指す方向性と,②「狭く深くの関わり」を目指す方向性,また,クライエントを理解する視点として,③「客観的・実証的」な視点と,④「主観的・共感的」な視点である。4つの特徴には,それぞれに心理臨床における必要性や意義がある。そこで,今後の心理アセスメント教育としては,各科目が4つのどの特徴を重視しているのか明確に示し,受講生に4つの特徴それぞれのメリットやデメリットも教育することが重要であると考えられた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ