賢治文学におけるユートピアの新展開 : 希望と悲嘆との狭間

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タイトル別名
  • The Evolution of the Utopian Ideas in Kenji Miyazawa's Works
  • ケンジ ブンガク ニ オケル ユートピア ノ シンテンカイ キボウ ト ヒタン トノ ハザマ

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抄録

賢治の初期作品「双子の星」に措かれた天上世界や、大正十三(一九二四)年に生徒に筆写させた「黄いろのトマト」に現われた現代風で且つ原始的な楽園などのユートピアは、現実世界と遠く離れているか、あるいは、どこか人に知られぬところにあるものである。このようなユートピアは、「黄いろのトマト」の結末で示唆されているように、醜悪な現実世界との接触、衝突などのプロセスを経て、相対化されてしまって、結局、崩壊するに至ることを免れない。それまで夢見つづけてきたユートピアの崩壊の結末を受けとめ、次のステップへの出発、つまり新しいユートピアの再構築に立ち向かうのが大事であろう。賢治作品の世界はこの時期(大正十三(一九二四)年)から、どのような変化が現れてくるだろう。本稿では、大正十三年ころから賢治の言説によく出てくる「新しい」という言葉に注目し、賢治におけるユートピアの新展開が、どのようになされているのかを、考察してみたい。

収録刊行物

  • Comparatio

    Comparatio 11 36-47, 2007-11-20

    九州大学大学院比較社会文化学府比較文化研究会

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