ムササビにおける外部形質と行動の発達

DOI HANDLE Web Site オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • Development of External Characters and Behavior of the Japanese Giant Flying Squirrel, Petaurista leucogenys
  • ムササビ ニ オケル ガイブ ケイシツ ト コウドウ ノ ハッタツ

この論文をさがす

抄録

ムササビPetaurista leucogenysにおける運動能力の発達と成長に伴う母仔関係の変化を解明する目的で,人工哺育の仔獣を用いた飼育下の観察及び自然繁殖した母仔の野外での行動観察を行なった.1.幼獣は約30日齢で開眼し,約40日齢から巣内で活発に動くようになり,その後に夜行性及び他個体追従性の傾向を強め,約52日齢に初めて巣外に出た.若年獣は巣立ち後の数日間を営巣木に留まって過ごし,その後に母獣の後を追って行動圏を徐々に拡大し,約70日齢から時に母獣と別れて宿泊した.2.日齢約30日の幼獣は水平な丸い棒(直径45mm以下)の上を未だ移動し得なかった.若年獣は約60日齢では垂直な細い丸棒(直径25mm以下)を登り得なかったが,約90日齢ではほぼ成獣並みの歩行能力を備えていた.3.若年獣は巣立ち数日後に初めて母獣への追従滑空を行なったが,一般に短距離を滑空するだけで,時には目標物まで到着できず地面へ降下することもあった.4.母獣は授乳のために1夜に1~3回巣に戻った.母獣は幼獣が転落した場合にはこれを巣に連れ戻し,また若年獣を巣立ち後もしばらくの間保護・誘導した.5.本種の成長過程を著しく特徴づける幼獣の遅い巣立ち及び母獣による積極的な仔の保護は,筋肉運動の微妙な調整を伴う滑空移動能力の習得までに長期間を要することへの一つの適応と考えられた.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ