共販体制下における産地商人の存立条件と対応形態 : 鹿児島茶を事例として

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タイトル別名
  • Merchants' behavioral patterns in producing areas in relation with farmer cooperative marketing
  • キョウハン タイセイカ ニ オケル サンチ ショウニン ノ ソンリツ ジョウケ

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抄録

1965年以降,茶においても産地茶市場設置というかたちで共販体制整備がなされてきているが,産地集荷・出荷にかかわって産地商人は大きな地位を占めている.鹿児島県の場合,1972年に県茶市場が設置されたが, いまだ産地集荷については40%, 出荷販売についてはそのほとんどが産地茶商によって担われている.従来の研究では,産地商人について農家ないし産地との対抗・矛盾の側面ばかり強調され,産地側にとっての合理的・補完的な側面は軽視されてきた.しかし,今後の茶の集出荷体制を考える場合,農協共販のみならず,今日現に茶の商品化を担っている産地商人についてその役割を明らかにすることが必要であろう.本稿では,そのような認識に立って,鹿児島県を対象に,産地商人の産地集出荷における機能と対応形態について考察し,その今日的意義を明らかにした.以下の要約すると次のようである.(1) 産地集荷にかかわって産地商人が存立する条件は,茶市場システムが集分荷,価格形成,情報流通の各々について十分機能していない点にある.集分荷の合理性を出荷費負担問題としてみれば,市場手数料5.4%(農協手数料等を含む)が農家にとって大きな負担であること,又定率手数料であることから実質的負担が農家間でアンバランスとなることが指摘できる.価格形成の点では,総体的には茶市場は産地における建値市場として重要な役割を担っているが,個別的価格形成については“一物多価”の特徴を示す.それは,茶市場における価格形成が個々の茶商の評価換能に大きく依存していることの結果であった.このことを個々の出荷者の立場からみれば,市場出荷の場合商人出荷と比較し単に自らの生産物の価格決定に参加できないのみならず,さらに実現価格の偶然性を甘受せざるをえないこととなる.さらに,情報伝達という点で茶市場は商人とくらべ不十分な機能しか果たしていない.(2) つづいて,県外出荷の動向についていえば,1965年当時その大半が九州内仕向けであったものが,主産地化の中で静岡・京都・大阪といった集散地市場仕向けへとそのウェイトを移していった.それらの販路開拓は,茶商協による共同販売をてことしながら,基本的に産地茶商の個別的・主体的販売努力によるものであった.現在の産地茶商による出荷対応のあり方は,全国的集散地市場仕向けの荒茶形態での出荷を大宗としつつ,同時に,あらたな地方消費地市場(中国,四国,東北,北海道)仕向けの仕上茶形態での出荷がみられる.特に,後者は産地側からの流通段階の短縮化と産地段階での付加価値部分のとりこみという点で大きな意味をもつものである.(3) 産地茶商が仕上茶販売-消費地出荷をおこなう場合,経営対応のあり方は,保管施設・仕上加工施設の拡充,品揃え機能の担当にみることができる.他方,産地集荷面については,農家の系列化が志向されている.それは,品揃え,ないし安定的分荷機能を果たすためには,産地における安定的集荷の確保が必要となるからである.系列農家に対しては多様な生産技術指導がおこなわれ,産地商人と農家との結合関係は極めて補完的なものである.(4) 以上のような対応をとりながら,今日産地茶商は全国的大手茶商に比肩するまでに成長した.近年,鹿児島と静岡における荒茶の価格差はほぼなくなってきている.又,仕上茶出荷額は鹿児島県製造品出荷額の第17位を占めている.今日的産地茶商の存立・展開は地域農業ならびに地域経済の発展にとって重要な役割を担っているのである.

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