クロマツ海岸林におけるマツカレハの卵寄生蜂の活動
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- 広瀬 義躬
- 九州大学農学部昆虫学教室
書誌事項
- タイトル別名
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- The activity of the egg parasites of the pine-moth, Dendrolimus spectabilis Butler in the Japanese black pine forest on the sea coast
- クロマツ カイガンリン ニ オケル マツカレハ ノ タマゴ キセイバチ ノ カツドウ
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説明
マツカレハに対する卵寄生蜂の寄生活動を評価するため福岡市付近のクロマツ海岸林4ケ所を選んで1960年と'61年の2年間野外採卵を定期的に行なつた.調査の結果6種の卵寄生蜂が見つかつたが,主要なものはキイロタマゴバチ,マツケムシクロタマゴバチ,フタスジタマゴバチの3種と認められた.各調査林の間で著しいマツカレハの発生消長の違いが見られ,また林の状況も相違していたが,一般にこれら3種の蜂の活動を次のように評価できる. 1. 夏期にはキイロが優勢で,マツカレハが産卵を始めてからわずか2週間位後には寄生率も蜂の密度も急速に高まる傾向を示した.しかしながら,マツカレハの産卵初期には蜂の密度は著しく低いので,大部分の寄主卵は蜂の寄生を免れていた. 2. 秋期のマツカレハ卵にはキイロの寄生は見られず,その代りクロの活動が秋になると目立つて来る.しかしながら,マツカレハの秋期の発生は夏期世代のごく一部に由来し,他の大部分は幼虫のまゝ越年して翌年の夏期に発生するのだから,この時期のクロの高い寄生率も翌年のマツカレハの発生にはあまり影響していない. 3. フタスジは夏,秋を通じて活動しているが,どの時期にも蜂の密度はきわめて低く,蜂が見つからない林もあつた.したがつて,調査したクロマツ海岸林でのマツカレハに対する卵寄生蜂類の寄生活動は,年間を通じてマツカレハのポピュレーションに有効に作用していないと云える.またクロマツ林内での蜂の周年経過について主として林内のマツカレハと他の寄主の存否と関連させて論じ,次のような点を明らかにした. 1. 夏から秋にかけてマツカレハ卵のない時期を持つ林では8月以降キイロはいなくなるようであるが,クロはたしかに生息を続けている. 2. クロの寄主としてクロスズメを記録したが,密度が非常に低いので,クロの活動の上で大きな役割は果していない. 3. キイロはマツカレハ卵ではなくて他の鱗翅目の卵の中で越冬する.秋にキイロの活動が見られないのは気温の低下のせいではない. 4. クロの越冬は成虫態で行なわれる可能性が強い. 5. フタスジはマツカレハ卵内で幼虫態で越冬し,翌年の寄主の発生期とおよそ同じ頃羽化するらしい.
収録刊行物
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- 九州大學農學部學藝雜誌
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九州大學農學部學藝雜誌 21 (1), 13-24, 1964-01
九州大學農學部
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390572174791023104
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- NII論文ID
- 110001707415
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- NII書誌ID
- AN0005519X
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- ISSN
- 03686264
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- DOI
- 10.15017/22912
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- HANDLE
- 2324/22912
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- NDL書誌ID
- 9024917
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
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