ミヤマキリシマの害虫類,特に九重と霧島におけるクジュウフユシャクとキシタエダシャクの発生について

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タイトル別名
  • Insect Pests of Rhododendron kiusianum Makino (Ericaceae), with Special Reference to Outbreaks of Inurois sp. and Arichanna melanaria Linnaeus (Lepidoptera, Geometridae) on Mts. Kuju and Kirishima
  • ミヤマキリシマ ノ ガイチュウルイ , トクニ ココノエ ト キリシマ ニ オケル クジュウフユシャク ト キシタエダシャク ノ ハッセイ ニ ツイテ

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説明

1. ミヤマキリシマは九州の山地特産のツツジの一種で,開花期の美しい景観で著名であり,大船山段原(九重)と雲仙池の原の群落は国の天然記念物に指定されている.このミヤマキリシマには40数年来“キシタエダシャク”と称する害虫の発生が伝えられ,各種の薬剤散布が行なわれてきたが,害虫の実態調査は皆無であつた. 2. 著者らは九重を申心に,霧島,阿蘇,雲仙などの主要自生地でミヤマキリシマの害虫調査を行ない,5目17科に属する34種の害虫を明らかにした. 3. このうち,現在九重と霧島に異常発生してミヤマキリシマに惨害を与えている害虫はクジュウフユシャクと新称するシャクガ科の昆虫である. 4. クジュウフユシャクは年1化性,成虫(♀は無翅)は11月に出現し,直ちに交尾産卵する.卵は食樹の主として小枝に卵塊(平均卵数は12)として産付きれる.卵態で越冬し,翌春4月下旬から5月上旬に艀化した幼虫はミヤマキリシマの新芽や蕾を貧食し,四令を経過して約1ケ月で老熟する.6月中旬にはほとんど地中に潜り,やや堅い繭を造つてその中で蛹化する.蛹期は約5ヶ月. 5. クジュウフユシャクに次いでキシタエダシャクが主要害虫であるが,個体数ははるかに少ない.本種も年1化性で,幼虫はクジュウフユシャクとほぼ同じ時期にミヤマキリシマの葉や蕾を食害する.盛期は約1ヶ月,成虫は7月を中心に出現する.卵態で越冬し,卵期は約9ケ月. 6. キシタエダシャクの幼虫には,色彩が顕著に異なる5つのタイプがあることを明らかにした. 7. 大船山におけるクジュウフユシャクとキシタエダシャクの垂直分布を観察し,段原では何故クジュウフユシャクが優勢であるかその理由を考察した. 8. 天敵については調査継続中であるが,本報ではクジュウフユシャクの幼虫に寄生するヒメバチの1種Callidiotes sp.(Porizontinae),キシタエダシャクの幼虫に寄宣するヒメバチ1種とヤドリバエ2種および幼虫を捕食するハナアブ科1種の存在を述べた. 9. 2種の主要害虫の食害が終つた夏から秋にかけて重要害虫が現在発生していないことは,春季に惨害をうけたミヤマキリシマが枯死全滅を免がれている最大原因の一つと考えられる.従つて,将来,この時期の害虫に対しては特別に留意が必要である.

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