「野生」の観念とその両義性--モンテーニュからシャトーブリアンまで

DOI HANDLE Web Site オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • Idea of savage and its ambiguities: from Montaigne to Chateaubriand
  • ヤセイ ノ カンネン ト ソノ リョウギセイ モンテーニュ カラ シャトーブリアン マデ

この論文をさがす

説明

「野生(sauvage)」の語のラテン語源としては,伝統的に二つの提案が知られて来た。silvaticusとsolivagusである。キケロ的語彙に属し,人間的都市の規範の外部をひとり彷徨うことを意味する後者は,偽語源であるとはいえ,野生的であることを表すのに相応しいものではある。「カニバルについて」のモンテーニュはブラジル野生人を,彼らの自然との近接性とそれゆえの自然法の遵守を理由に,完全な市民として描いたが,その彼においても,この語は大抵の場合,政治的規範としての自然への異質性を指し示すために用いられたのである。過度の研究のために社会的有用性を忘れる哲学者は,かくして語の本来的意味での野生人となる。続く世紀においても事情は変わらない。〈偉大な世紀〉の想像力において,アメリカ先住民の形象は周縁的なものであったが,民族学的ではなく道徳的意義における野生人の形象であれば,大いに存在感を保っていた。宗教的隠遁者ないしはその他の社会を逃れようと望む人々,彼らの表象は,「野生」の観念の貶下的な道徳的コノテーションの重要性を証し立てている。しかしながらこのような事情も,野生的存在がときおり,全面的に肯定的にというのではないとしても,少なくとも両義的な仕方で提示されるのを妨げるものではない。シャト― ブリアンは彼の野生的人物たちを〈ルイ14世の世紀〉と〈摂政時代〉を舞台として活動させたが,彼が野生の気質の伝統から近代的な文学的感受性を誕生させているのを見るのは,この点からすると興味深い。

収録刊行物

  • 人文學報

    人文學報 98 177-203, 2009-12-30

    京都大學人文科學研究所

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ