<論説>憎まれた賢帝ハドリアヌス : 政治史からみた五賢帝時代の実相

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タイトル別名
  • <Articles>Hadrian, a Hated Emperor
  • 憎まれた賢帝ハドリアヌス--政治史からみた五賢帝の実相
  • ニクマレ タ ケンテイ ハドリアヌス セイジシ カラ ミタ 5 ケンテイ ノ

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説明

今日ローマ五賢帝の中でも特に「賢帝」の美名をほしいままにしているハドリアヌスは、実は当時の政治支配層たる元老院議員たちからひどく憎まれており、死後あやうく「暴君」のレッテルを貼られるところであった。何故彼は憎まれたのか。それは単に彼の複雑な性格、強い個性に帰されるべきものなのだろうか。本稿はこうした素朴な疑問から出発する。そして、彼の即位をめぐる問題、四元老院議員処刑事件、帝位継承者選定問題の考察を通じてその政権の本質を解明することを試みた。その際、これらの重要事件を個々別々に、あるいは事件史的方法で検討するのではなく、プロソポグラフィー的研究の与えるデータを政治史研究の中へ取り込みながら、当時の政界、とりわけ元老院議員階層の実体に即して検討し、治世全体を通じて一貫した説明を与えようと努めた。その結果、ハドリアヌスの登位が政治支配層内部での重大な勢力交替を意味したこと、後継者選定問題が政権を支える政治支配層の動向と密接な関わりをもっていたこと、そしてハドリアヌス憎悪の背景もそのあたりに求められることなどが明らかになった。そうした考察の成果に基づき、筆者は五賢婦時代の政治史に関する通説的説明を批判するとともに、元首政という政治体制の重要な性格についても言及している。

収録刊行物

  • 史林

    史林 71 (6), 934-981, 1988-11-01

    史学研究会 (京都大学文学部内)

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