<論説>産業報国運動の展開 : 戦時生活統制と国家社会主義

書誌事項

タイトル別名
  • <Articles>The Development of the Sangyo Hokoku Undo (The Industrial Movement to Serve the State) : State Socialism and the Wartime Control of Living Conditions
  • 産業報国運動の展開--戦時生活統制と国家社会主義
  • サンギョウ ホウコク ウンドウ ノ テンカイ センジ セイカツ トウセイ ト コッカ シャカイ シュギ

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説明

日中戦争が長期化するなかで、産業報国運動(産報運動) は政府主導のもとに再編され、その過程で、それまで許容されていた労働組合の存在は否定される。その背景には、「生活刷新運動」と「福利厚生運動」を軸にした、国家による戦時生活統制の全面化があった。 生活統制の金面化は、「職場」と「家庭」の分業を前提とした近代資本主義社会の原則に抵触する。そのため、産報運動をめぐっては、「職場」と「家庭」を国家のもとに一体化しようとする「国家社会主義的な労資一体論」と、両者の自律性にあくまでもこだわる「自由主義約な労資一体論」との対立が顕在化した。この対立は、官界・財界・労働界に反映され、産報運動は階級縦断的な対抗関係を軸に展開されていく。その中で、運動の主流を構成したのは、前者、すなわち「革新官僚」と連携した「財界修正派」と、労働界から産報に加わった旧全労系の「国家社会主義派」とであった。しかし、国家による生活統制が破綻するにともない運動は停滞し、企業論理が優先されていくなかで、産報主流派は崩壊する。事態は、戦後へむけて、再び流動的な局面をむかえることになる。

収録刊行物

  • 史林

    史林 82 (1), 68-101, 1999-01-01

    史学研究会 (京都大学文学部内)

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