<論説>受命の書 : 漢受命伝説の形成

書誌事項

タイトル別名
  • <Articles>The Book of Heaven's Mandate : The Formation of the Legends of the Han Reception of the Mandate of Heaven
  • 受命の書--漢受命伝説の形成
  • ジュメイ ノ ショ カンジュメイ デンセツ ノ ケイセイ

この論文をさがす

説明

本論文は、儒教が漢の皇帝権威を正統化した理論構造を明らかにするものである。まず、帝王受命伝説のひな形として、周の受命伝説が漢代の識緯思想によってどのように発展したかを見ていく。『尚書』「今文太誓」では、周武王の受命の符は王の舟に飛び込んだ白魚であった。しかし、この伝説は緯書『尚書中候』に取り込まれると、ただの白魚から、受命を意味する文字(河図) が記された白魚へと変化した。また文王の受命の符として赤雀が銜えてきた丹書は、すなわち洛書であると見なされた。後漢初期の王充『論衡』が、河図・洛書が人が読み得るものと考えているように、前漢末から後漢時代には、天命は河図・洛書として、書物の形で「文字に書かれて」下される、との認識が広まっていたのである。王莽簒奪や光武帝の後漢再興の際にも、この思想は援用され、符命・図識と呼ばれる「受命の書」が盛んに偽造された。とくに、後漢光武帝の「図識」は、天の書である「図」と、孔子が制作した「識」に分類され、光武帝は「図」(つまり河図・洛書) に基づく自身の受命は、経書や同じく孔子の手になる「識」によって経学的な裏付けを持つと主張した。後漢時代には、天は孔子に対して漢高祖の受命を記した書を下した、との伝説も形成された。孔子を漢受命の仲介者とすることで、漢の受命は儒教に基づく正統性を獲得したのである。

収録刊行物

  • 史林

    史林 88 (5), 699-725, 2005-09-01

    史学研究会 (京都大学文学部内)

キーワード

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ