<論説>戦争・国家・スポーツ : 岡部平太の「転向」を通して (特集 : 戦争)

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タイトル別名
  • <Articles>War, State and Sports : Okabe Heita's "Conversion" to Nationalism (Special Issue : WAR)
  • 戦争・国家・スポーツ--岡部平太の「転向」を通して
  • センソウ コッカ スポーツ オカベ ヘイタ ノ テンコウ オ トオシテ

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抄録

アジア太平洋戦争時期は日本のスポーツ界にとって受難の時代と記憶されている。しかしこれを中国大陸からながめると、全く違った様相が浮かび上がる。純粋スポーツの信奉者で、満洲にスポーツ王国を築いた岡部平太は、満州事変にいちはやく国家主義スポーツを提唱した。この「転向」は、日中両国の激しい抗争の場であった満洲の現実が醸成したもので、国策への便乗として片付けることはできない。その後岡部は天津で、軍特務としてスポーツを通じた文化工作を試みる。日中戦争勃発後、国家主義スポーツは日本の青年たちを戦場へと駆り立てた。一方、華北の占領地でスポーツは文化工作の一環として実施された。かくてスポーツは戦争の加害者となった。これは軍の強制によるというよりは、スポーツ界が戦争という状況に主体的に対応した結果であった。軍自身は武道・体操を重視し、スポーツを敵視する態度を取っており、そのため一方でスポーツ受難のイメージが形成され、他方で加害者としてのスポーツのイメージが隠蔽されたのである。

収録刊行物

  • 史林

    史林 93 (1), 98-130, 2010-01-31

    史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)

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