<論説>清末中国の文明観転換と自己認識 (特集 : 文明)

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タイトル別名
  • <Articles>Qing-Dynasty China's Shift in Perspective on Civilization and Self-Awareness (Special Issue : Civilization)
  • 清末中国の文明観転換と自己認識
  • セイマツ チュウゴク ノ ブンメイカン テンカン ト ジコ ニンシキ

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抄録

清末知識人は、中国文明を唯一の文明と見る文明観から転換し西洋文明の優位を認める過程で、どのように新たな自己認識を形成したのだろうか。従来この問題は、主に日清戦争後の国民性認識として論じられてきた。しかしそこに見られる中国人の保守性、消極性、怠惰性、虚偽性、卑屈性、利己性等の強調は、一八七〇年代後半から八〇年代の先進的知識人における文明観転換の中で、郭嵩燾、王韜、張徳彝、鍾天緯、鄭観応などにすでに見出せる。注目すべきは、一八七〇年代半ば以降、『万国公報』に掲載されたアレン、ファーバーら宣教師の漢文著作では十九世紀西洋の否定的中国認識をふまえた中国国民性批判が展開され、それが知識人に広く流布していたことである。こうした宣教師と知識人の中国国民性批判を比較検討すると、知識人が宣教師の著作から強い影響を受けていたことがわかる。西洋近代が生んだ否定的中国認識を継承する宣教師の中国国民性批判が、伝統的中華意識に代わる新たな自己認識を強力に方向付けたのである。

収録刊行物

  • 史林

    史林 102 (1), 75-112, 2019-01-31

    史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)

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