口永良部島における磯魚の摂餌生態に関する研究

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タイトル別名
  • Study on the Feeding Ecology of Reef Fishes in Kuchierabu Island
  • クチノエラブジマ ニ オケル イソウオ ノ セツジ セイタイ ニカンスルケンキ

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抄録

本研究は、薩南諸島の口永良部島の本村湾と西浦において、1971~79年にかけて、この水域に生息する磯魚のうち、普通にみられるスズメダイ科(3種)、ブダイ科(11種)、ニザダイ科(5種)、アイゴ科(2種)、ベラ科(12種)及びヒメジ科(3種)の36種の魚類について、それらの生息量、食性、摂餌場所と餌生物相、摂餌行動を、潜水観察と採集により明らかにし、これらの磯魚相互の摂餌場所と餌生物の利用関係について研究を行った。 以下に結果を要約して述べる。 1)36種の魚類は、本村湾の磯において生息数が非常に多く、昼間に底層域を活動している。 2)これらの魚類の胃内容物を分析すると、スズメダイ科、ブダイ科、ニザダイ科及びアイゴ科の21種は、主として緑藻や紅藻の小型藻類を摂餌しており、ベラ科とヒメジ科の15種は、端脚類、橈脚類、十脚類、多毛類及び貝類等の小型動物を捕食している。 3)これらの魚類は、いずれも岩や死サンゴ礁に小型藻類の繁茂している場所を利用しており、この場所には餌となる端脚類、橈脚類、十脚類、多毛類及び貝類等の小型動物が、他の場所に比較して豊富に生息している。 4)この小型藻類が繁茂している場所の利用関係についてみると、スズメダイ科魚類は、この場所に縄張りを作り、単独で摂餌しているが、スズメダイ科以外の5科の魚類は、異種または、同種の間で互いに群れを作り、摂餌している。 5)以上の結果から、磁魚の摂餌様式はスズメダイ科の3種のように、植物食性で、縄張りを作り、単独で摂餌するものと、ブダイ科、ニザダイ科及びアイゴ料魚類の18種のように、植物食性で、移勤しながら、群れを作り摂射するもの、及びベラ科とヒメジ科の15種のようは、動物食性で、移動しながら, 群れを作り、摂餌するものに分けられる。 6)これらの異なる摂餌様式を持つ魚類相互の摂餌関係についてみると、植物食性のスズメダイ科魚類は動物食性のベラ科とヒメジ科の魚類が縄張り侵入した場合には攻撃行動は少なく、同じ植物食性のブダイ科、ニザダイ科及びアイゴ科の魚類が縄張りに侵入した場合、激しく攻撃して縄張り内の小型藻類の確保を図っている。一方、スズメダイ科以外の植物食性の魚類は、異種または同種間で互いに群れを作り、群れ行動により、スズメダイ科魚類の攻撃を避けながら摂餌しており、ベラ科とヒメジ科の魚類も異種または同種の群れ行動によって他の個体が摂餌した後から出てくる小型動物を捕食している。 7)このように、口永良部島の磯における36種の魚類は、摂餌場所と餌生物相に対応して、食性や摂餌様式を異にし、魚種相互で競合及び協調聞係を持ちつつ共存していることが明らかとなった。

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