慢性Mg欠乏により発生した乳牛のケトージスについて

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  • Chronic hypomagnesaemia on bovine ketosis

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抄録

前号で,大学付属牧場の全ての乳牛が低酸度二等乳を泌乳し,その乳牛群に骨粗鬆症が発生していることを論じた。即ち,その原因は粗飼料のMg 不足により乳牛の血清Mg が低下し血清Ca が増加したために,骨から多量のCa が乳汁に移行した為に生じたものである。なお牛乳中にCa が多いとアルコール試験で不安定になることが知られている。 粗飼料中のMg 含量はDM 中として0.2% 以下でグラステタニーが発生すると云われている。この乳牛群20頭を追跡調査する過程で血清P の急激な低下から代謝異常の発生を指摘し,獣医師が検診したところケトージスが集団発生していることが判明した。発病前は血清Ca 4.17 mEq,Mg1.78 mEq,P 6.82mg/dl に対し,発病後は血清Ca3.93 mEq,Mg1.84 mEq,P 4.95 mg/dl であった。この乳牛にMgSO4とMgCl2を投与したところケトージスは回復したので血清Mg がケトージス発病に深く関与していることが推定される。ケトージス発生時は血清中のα-Ketoglutarate が増加しているとの報告があり,TCAサイクルの酸化的脱炭酸反応の過程で補酵素としてMg が必須である。この乳牛群でのケトージスの発生はMg不足に要因があると考えられる。人の脚気はビタミンB1欠乏症であるが乳牛のケトージスは同一の部位の代謝障害であり,乳牛の起立不能症も深く関連していると推定される。 大学周辺の民間牧場でケトージスが発生した際,健康な乳牛93頭の平均値Ca 4.28 mEq,Mg 2.00 mEq,P 7.81 mg/dl に比べて,罹患乳牛群72頭ではCa 3.76 mEq,Mg 1.77 mEq,P 5.06 mg/dl であり,付属牧場同様にCa,Mg,P ともに低下する傾向を示した。 この牧場では乳牛の急性疾患である起立不能症のグラステタニーのほか,慢性疾患である低酸度二等乳と骨粗鬆症が発生しており,亜急性のケトージスが発生した。これらの疾病の原因は粗飼料に由来するMgの不足に起因すると考えられる。

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