[雑報] 腫瘍内科医が分子生物学を学んでみたら : in silicoの壁

書誌事項

タイトル別名
  • 腫瘍内科医が分子生物学を学んでみたら : in silicoの壁
  • シュヨウ ナイカイ ガ ブンシ セイブツガク オ マナンデ ミタラ : in silico ノ カベ

この論文をさがす

抄録

type:text

[要旨] 臨床腫瘍学の分野では,遺伝子変異や遺伝子発現の程度に応じて治療方針を決めることが当たり前になりつつあるが,分子生物学に基づく医学の進歩は極めて速く,臨床医にとって遅れずについて行くのは容易なことではない。新規の分子標的治療薬を使いこなすには,がん細胞の発生,増殖,生存を司っているドライバーがん遺伝子についての理解が不可欠である。そこでそれらの基礎研究論文を読んで,実験方法を理解することを試みた。比較的最近に発見された非小細胞肺癌のドライバーがん遺伝子にALK 融合遺伝子,ROS1 融合遺伝子,RET融合遺伝子がある。これらのがん遺伝子を見つけるに至った実験を理解するにはアメリカの分子生物学教科書がきれいな図が豊富で大変役に立ったが,縦列質量分析や次世代シークエンサーなどの網羅的解析技術は理解が困難であった。そして壁になっていたのは,in vitroやinvivoの実験手技よりも,得られた大量の実験データをin silicoでどのように処理するかというバイオインフォマティクスの領域であることに気がついた。がんゲノム医療の時代を控えて,腫瘍内科医には次世代シークエンサーで得られた膨大な情報を取捨選択し,担当医や患者が理解できるように上手くまとめることが早晩求められるようになるであろう。これをキュレーションと呼ぶが,そこには数多のハードルが横たわっていることが予想される。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ