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Description
口腔は刺激を受ける機会が多く、それゆえ線維過形成性病変が高頻度で生じる臓器である。外傷や慢性的な刺激に対し反応性に増殖する線維腫は刺激性線維腫と呼ばれ、腫瘍性に発生した線維腫(腫瘍性線維腫)とは区別されているが、組織学的な鑑別は難しいことが多い。即ち、刺激性線維腫と診断された症例でも、刺激の発生状況等の臨床情報が乏しいことが多く、刺激性線維腫に腫瘍性線維腫が含まれている可能性を否定できない。一方、義歯の刺激が原因で発生した線維過形成性病変は義歯性線維腫と呼ばれ、真の刺激性線維腫といえる。そこで、義歯性線維腫と腫瘍性線維腫を比較することで、線維増殖性病変における組織学的な鑑別点を明らかにする目的で検討を行った。対象症例は、線維増殖性病変のうち腫瘍性線維腫15例(真の線維腫4例、周辺性歯原性線維腫11例)と、義歯性線維腫15例の合計30例を用いた。線維組織の性状診断にはマッソントリクローム染色を行った。CD34、Bcl-2およびKi-67の免疫組織化学的な発現解析には酵素抗体(SAB)法を用いた。また、細胞数および免疫組織化学的陽性細胞率の平均値を求め、それぞれの差をウェルチのT検定で統計解析した。CD34の発現は、義歯性線維腫の紡錘形細胞に高レベルで観察されたが、腫瘍性線維腫には認められなかった。Bcl-2の発現は、腫瘍性線維腫で強い陽性像が観察されたが、義歯性線維腫では低レベルであった。Ki-67陽性細胞率は義歯性線維腫より腫瘍性線維腫で有意に高かった。また、細胞数も同様の結果を示した。マッソントリクローム染色では、腫瘍性線維腫より義歯性線維腫にコラーゲン線維の増生が観察された。腫瘍性線維腫と義歯性線維腫は、組織学的および免疫組織化学的に異なった性状を呈し、これらの所見が線維増殖性病変の鑑別に有用である可能性が示唆された。(著者抄録)
Journal
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- 神奈川歯学
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神奈川歯学 54 (1), 10-17, 2019-06-30
神奈川歯科大学学会
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390572174812529152
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- NII Article ID
- 120006723260
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- NII Book ID
- AN00043576
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- ISSN
- 04548302
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- IRDB
- CiNii Articles
- KAKEN
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- Abstract License Flag
- Allowed