地域労働市場の今日的地域性と農業―秋田県雄物川町と長野県宮田村の比較分析―

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タイトル別名
  • Regionality in Today’s Local Labor Market and Agriculture: A comparative analysis of Miyada village in Nagano and Omonogawa towns in Akita
  • チイキ ロウドウ シジョウ ノ コンニチテキ チイキセイ ト ノウギョウ : アキタケン オモノガワマチ ト ナガノケン ミヤダムラ ノ ヒカク ブンセキ

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抄録

本稿では,東北の低水準な男子常勤賃金が農家世帯に特殊なものではない可能性を踏まえながら地域労働市場の実態を明らかにすること,及びこうした中で農家世帯はいかに家計費を確保しているのかを実証的に明らかにすることを課題とした。 先行研究では,2000年代前半以降の東北の農家世帯男子の常勤賃金は,成人1人当たりの家計費にしか満たないことが明らかにされていたが,こうした低水準な男子常勤賃金は農家世帯に特有なものか否かについては十分に検証されていなかった。 この点を確認するために,秋田県横手市雄物川町O集落及び長野県上伊那郡宮田村N集落を事例に,地域労働市場の比較分析を行った。結果,両地域とも青壮年男子農家世帯員の大半は正規雇用者として常勤的に就業していた点は共通していたが,N 集落では「年功賃金」体系が一般化していたのに対し,O集落では大半が単身者賃金の水準にとどまっていた。さらにO集落の青壮年夫婦の中には,夫婦共働きでも家計費を賄うことが困難な事例が検出された。しかし彼らの自営農業への従事は限定的であり,不足する家計費は同居する親世代によって賄われていると考えられた。 またO集落の賃金構造や就業状況は横手市の農外就業状況をある程度反映していた。よって東北の低水準な男子常勤賃金は農家世帯員に特別なものではなく,域内の労働者世帯にも当てはまるものであると考えられることから,これを「価値分割」的賃金であると結論づけた。

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