米豪自由貿易協定の交渉過程と影響分析―農業問題を中心に―

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タイトル別名
  • An analysis of the negotiation process of the United States and Australia Free Trade Agreement and estimation of its economic impact : focusing on agricultural issue
  • ベイゴウジユウ ボウエキ キョウテイ ノ コウショウ カテイ ト エイキョウ ブンセキ ノウギョウ モンダイ オ チュウシン ニ

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抄録

本稿の課題は,2005年1月に発効した米豪自由貿易協定(米豪FTA)を対象として,農業分野を中心に交渉過程や協定締結による経済的影響を分析することである。その概要は以下の通りである。第1に一般的な2国間による関税引き下げ交渉が合意に至るための理論的な諸条件を分析する。交渉によって両国が関税撤廃する自由貿易は常にパレート最適であるが,交渉結果が常にそうなるとは限らない。第2に米豪FTAにおける農業分野を中心に交渉の経過とその合意内容を分析する。交渉過程においてアメリカは一部農産物の関税撤廃に消極的であったため,交渉は一時難航した。最終的に砂糖や乳製品の関税撤廃からの例外化,牛肉の長期に渡る段階的な貿易自由化とセーフガードの導入など,アメリカのセンシティブ品目に十分配慮された形で合意に至った。第3に米豪FTAの効果と影響をGTAP(Global Trade Analysis Project)を用いて定量的に測定し,米豪両国が関税を完全撤廃した場合と今回の合意案が完全に実行された場合を比較する。分析の結果,完全撤廃の場合,等価変分とGDPは米豪両国共に正となる。しかし合意案の場合,アメリカの等価変分とGDPは完全撤廃時よりもわずかに上昇するが,オーストラリアは基準時点よりも低下する。交渉理論に基づけば,今回の交渉妥結点は著しくオーストラリアにとって不利なものであり,オーストラリアにはさらなる譲歩をアメリカに求められる余地がある。アメリカの砂糖と乳製品の関税割当制度撤廃の見送りによる豪州が逸した利益,特に砂糖の生産者のそれは大きい。

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