日本語母語話者の体験談の語りについて : 談話に現れる事実的な「タラ」「ソシタラ」の機能と使用動機

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タイトル別名
  • Personal Narratives Spoken by Japanese Native Speakers: The Functions of "tara/soshitara" and the Motives for Using Them in Discourse
  • ニホンゴ ボゴワシャ ノ タイケンダン ノ カタリ ニ ツイテ ダンワ ニ アラワレル ジジツテキ ナ タラ ソシタラ ノ キノウ ト シヨウ ドウキ

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抄録

本研究は、過去に発話者自身が体験した出来事について語った談話(体験談の語り)の特徴を明らかにしようとしたものである。テレビ番組から採録した、日本語母語話者による体験談のデータ分析を行ない、そこに現れる接続辞・接続詞(具体的には、述語のテ形・末尾にデのついた接続詞に次ぐ頻度を持つ「タラ」「ソシタラ」)を対象に、その機能と、使用動機について考察し た。そうした考察を通じて、情報とそれが言語化されたものとの関係を探ろうとした。 まず、「タラ」「ソシタラ」の統語的・意味的性質を確認し、次に、先行研究を元にこれらを四つの用法(発見・発現・反応・連続)に分類した。そして、これらの前後件の述語のアスペクトに反映されている情報構造(前景/ 後景情報)に着目して考察を行なった。 発見用法については、前件動作との関連性を表示しつつ、後件の認識主体の視点を通して背景を更新するのが使用動機であると述べた。発現用法については、注目動作が始動することを劇的に描写する機能があり、この用法の使用が、発話者の談話構成の意識を反映していることを指摘した。また、反応用法の機能は、主語転換を伴う継起的動作を叙述することで、最も頻繁にそれが使われる場面として会話部分の描写が挙げられると指摘した。また、連続用法については、完結性のある動作をつなぎ前景情報を作る述語のテ形と比較し、「意外性」という「評価」を示しつつ出来事を叙述するという機能が、テ形にない独自なものであることを述べた。 また、この意外性という心的態度の表示機能は、これら4用法全てが持つものであり、後件述語のコントロール不可能性という「タラ」「ソシタラ」の統語的・意味的性質に基づくものであることを述べた。 最後に、この「命題の叙述と評価を同時に行なう」という性質こそが、事の顛末まで全てを知る話者が、体験談の語りの中でこれらを使う最大の使用動機であると主張した。

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