学校評価活動と公共性理論 : ハーバーマスとホネットの理論を中心に

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タイトル別名
  • ガッコウ ヒョウカ カツドウ ト コウキョウセイ リロン ハーバーマス ト ホネット ノ リロン オ チュウシン ニ
  • Public sphere theory as theoretical foundation for school evaluation : referring to the work of Habermas, J. and Honneth, A.

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抄録

本稿ではまず,教育と公共圏の関係について,ハーバーマスの描いたシェーマ(schema,図式)に概ね沿う形で,黒崎が指摘する具体的な「仕掛け」としての学校評価活動を研究対象として論究していくが,公共圏に参加する主体の形成に関しては,ハーバーマス理論を援用する野平の構想には与せず,ホネットの理論に準拠しながら検討したいと考えている。 本稿第1章では,ハーバーマスのコミュニケーション理論から,「コミュニケーション的権力」概念を学校評価活動に適用する。これは,討議過程において人びとがコミュニケーション的自由を公共的に使用することから権力が発生するという概念で,評価活動における「参加」や「協働」の制度設計を考える際に重要なものとなる。 第2章では,ホネットの理論から,彼の「承認をめぐる闘争」概念を用いて,学校評価活動への生徒参加について論じる。この概念は,アイデンティティ形成に必要な相互主観(間主観)的な承認関係が他者との闘争によって発展・拡大していくというもので,公共圏における世代間闘争を論ずる際にこれを援用することで,生徒参加の理論構築を試みる。 なお,本稿で使用する「公共性」という用語は,特に指定しない場合は「市民的公共性」を指し,その意味は入江幸男の定義に基づいて「ある問題に関してあらゆる論点を自由にとりあげて,それについて理性的に議論を行い」,しかも「その議論が公開されて,すべての人がその議論に自由に参加できる」性質とする。そして,このような状態が成立している社会空間を「(市民的)公共圏」あるいは「公共空間」と呼ぶこととする。 さらに「熟議」という用語については,管見によればこの語を初めて使用した法哲学者である井上達夫が,「一人で熟慮するのではなく,皆で話し合って熟慮する」ことであると解説している。この解説とハーバーマスの協議政治モデルに基づき,本稿が用いる学校評価活動などにおける「熟議」とは,「生徒・教職員・保護者,あるいは地域住民が対等の立場で協議し,熟慮し合うことで共通理解を形成していく行為」とする。

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