歌川国貞(三代豊国)筆「源氏後集余情」について : 受容者としての御殿女中

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タイトル別名
  • Utagawa Kunisada's Genji goju yojo, the set of large-sized nishiki-e prints based on the serialized novel Nise murasaki inaka Genji : waiting women in a shogun or daimyo's palace as its receiver
  • ウタガワ クニサダ(サンダイ トヨクニ)ヒツ「ゲンジ ゴジュウ ヨジョウ」ニツイテ : ジュヨウシャ ト シテノ ゴテン ジョチュウ
  • ウタガワ クニサダ(サンダイ トヨクニ)フデ 「 ゲンジ ゴシュウ ヨジョウ 」 ニ ツイテ : ジュヨウシャ ト シテ ノ ゴテン ジョチュウ
  • 歌川国貞三代豊国筆源氏後集余情について : 受容者としての御殿女中

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抄録

「源氏後集余情」は、柳亭種彦(1783~1842)作、歌川国貞(三代豊国、1786~1869)画の『偐紫田舎源氏』(1829~42)に由来する源氏絵である。旧来、源氏絵とは『源氏物語』の情景を描いた絵画を指していたが、幕末に『偐紫田舎源氏』の主人公である足利光氏を描いた錦絵が多数制作されるに至って、これらも源氏絵と総称されるようになった。「源氏後集余情」は二枚続大判錦絵の揃物で、国貞が安政四年から文久元年(1857~1861)にかけて制作したものであるが、その詳細はいまだ明らかになっていない。本稿の課題は、国貞が「源氏後集余情」という揃物を制作するにあたって、『偐紫田舎源氏』の表紙や口絵、挿絵をどのように編集、改変することによって、どのような受容者の、どのような欲望に訴えかけようとしたのかを考察することである。そのために、典拠となった『偐紫田舎源氏』の図様と「源氏後集余情」の図様を比較、分析する。その結果、男女一対の図様に編集したり、大名を連想させる文様や歌舞伎の衣裳に改変したりすることによって、大名の夫人に仕える御殿女中や、その予備軍である嫁入り前の富裕な町人や下級武士の子女の関心に応えようとしていた可能性を指摘する。「源氏後集余情」の図様は、御殿女中にとっては、生来の身分から脱却して職業的自立や栄達への欲求を、またその予備軍である少女たちにとっては、豪奢な生活空間への憧れに訴えかけ、それぞれの理想的な人生設計を視覚化したものであったと考えられる。

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