関屋の結構 : 源氏物語における"かなふみ"の形相

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タイトル別名
  • セキヤ ノ ケッコウ ゲンジ モノガタリ ニオケル カナフミ ノ ケイソウ

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説明

はじめに : 本稿の概要 : 光源氏の須磨謫居の動静を遠国で耳にしながら音信不可通の情況に不安に過ごす女の様子から語り出される源氏物語関屋巻。その始まりに用いられた引歌について、女のいる常陸に合わせ本歌の「甲斐が嶺」を「筑波嶺」に言い換えたとする花鳥余情以来の解釈が支持されて久しい。しかし、このような言い換えがなされた所以にまで考え及ぼそうとするとき、通説はなお表層の域にとどまっており、行き届かぬ憾みが遺る。本稿では、「甲斐が嶺」の東歌が引き踏まえられた理由を、関屋に重出する要語「かひなし」との連環に求めるとともに、現在顧みられることのない「筑波嶺の」の歌二首をも、この帖の女の心情を象るのにふさわしい典拠として再評価する。巻末で「憂き宿世ある身」を観じて出家するに至るこの人が「帚木」と呼ばれる必然性にも繫がっている。これは、作中和歌を中心に配されている縁語を拠り所に、かなふみの様式を模索実現しようとした作意の跡を辿ろうとする試みである。

収録刊行物

  • 文学史研究

    文学史研究 59 1-17, 2019-03-30

    大阪市立大学国語国文学研究室

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