Chism, N.V.N. 1999 Peer Review of Teaching. A Source Book.Bolton, MA.:Anker Pub. Co. Inc.

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抄録

米国に POD と略称で呼ばれるファカルティーディベロッパーたち(FDer)の組織がある。これはオーストラリアの HERDSA と同じように毎年大会を開催して FDer たちの親睦と研究活動を支えている。POD のホームページには FDer のための必読書のリストが掲載されている。チズムの本もそのひとつである。出版されてからもう 10 年にもなるが,私がこの本を読んだのは数年前であり,一気読みしたのが3年前である。その年,神戸大学大学教育推進機構ではメルボルン大学高等教育研究センターからケリー・リー・ハリス氏を招いて「授業評価から peer review へ」と題する FD 講演会を開催した。そのときにハリウス氏はオーストラリアの高等教育界では教育評価の主流が学生授業評価からpeer review へとシフトしだしたと述べた。それがきっかけになり私はシドニーの高等教育研究所とメルボルン大学へ,さらにその年にアデレードで開催された HERDSA2007 に出席した。チズムの本は日本とオーストラリアを往復するジェット機の中で読み上げた。実に明快であり,FDer だけでなく授業の評価や改善の実際について知りたい教員にとっては大変有益な手引書となることまちがいなしである。本は2部構成であり,第一部でピアレビューの概観がなされ,第2部でピアレビューをする際に使用するシートやマニュアル等が手際よくまとめて A4 判の冊子となっている。以下に目次を示す。これを見るだけでも内容がどれほど実戦的で実務家向きのものかがわかるだろう。ピアレビューは形成的評価のためのものと総括的評価ンのためのものを区別すべきであること,形成的評価ではレビューワーとしてベテラン教員と新任教員を二人一組でさせることが望ましいことなど,なるほどと思わせる事項が書かれているだけでなく,授業観察のチェックシートやティーチングポートフォリオのモデルまでついてあり,ピアレビューだけでなく,授業評価や授業観察をしたいと考えている教員や事務担当者にとっても役に立つ情報が満載のガイドブックとなっている。

収録刊行物

  • 大學教育研究

    大學教育研究 17 129-131, 2008-09

    神戸大学大学教育推進機構

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