<論文>山本明コレクション資料にみる『どっこい生きてる』(1951)上映促進運動の実態

書誌事項

タイトル別名
  • <Articles>Examining the grassroot promotion campaign for Dokkoi Ikiteru (Still I Live On) through Materials in the Yamamoto Akira Collection
  • 山本明コレクション資料にみる『どっこい生きてる』(1951)上映促進運動の実態
  • ヤマモトメイコレクション シリョウ ニ ミル 『 ドッコイ イキテル 』(1951)ジョウエイ ソクシン ウンドウ ノ ジッタイ

この論文をさがす

説明

GHQ/SCAPによる日本占領の末期の経済政策及び労働政策の方針転換は, 職場からの日本共産党員及び同調者の追放を促した。一方, 日本共産党は占領当局及び日本政府に対する強硬な対決姿勢へと転じ, 党の指導下にある文化人及び全国の文化サークルに「文化闘争」を呼びかけた。「文化闘争」の一環として, 1950年末から1951年春にかけて製作された映画『どっこい生きてる』(今井正監督)は, 一般に流通する商業的日本映画の製作・流通システムに依拠しない自主的な製作・公開を志向し, 委員会方式の製作体制や, 映画会社や劇団の別を越えた多彩な俳優の出演, 通常の興行ルートを介さない上映手段の確保などの手法によって, 以降の独立プロダクション映画運動に大きな影響を及ぼした。『どっこい生きてる』の製作には, 映画の主題である「ニコヨン」と通称された失業対策事業で働く労働者が組織的に協力し, また, 全国の映画サークルが募金による資金調達や上映促進運動などの役割を担った。従来, 『どっこい生きてる』の製作〜上映プロセスに, 映画サークルが具体的にどのように関与したのかについては不明点が多かったが。山本明コレクションに含まれる各地の映画サークルの内部資料には, 『どっこい生きてる』に関連する資料も含まれており, 募金活動, 地元映画館との上映交渉, 観客動員増のための宣伝運動といった, 映画サークルの具体的な活動の実態が明らかになった。また, 全国映画サークル協議会が幻灯版『どっこい生きてる』を製作・頒布し, 各地の映画サークルや労働組合が幻灯上映による宣伝活動を展開していたことも確認された。独立プロダクション映画運動において幻灯の担った役割については, 従来の映画史文献ではほとんど言及されてこなかったため, 日本映画史・映像文化史のミッシング・リンクを解明する手がかりが, 山本明コレクション資料の調査を通じて得られたということができる。

収録刊行物

  • 人文學報

    人文學報 116 37-51, 2021-03-31

    京都大學人文科學研究所

参考文献 (13)*注記

もっと見る

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ