<論文>中小企業のスピンオフと地域貢献型企業への発展過程 : 三沢エンジニアリング(青森県)の事例分析

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タイトル別名
  • <Article>Spin-off of a Small and Medium-sized Enterprise and Developing Process to a Regional Contributing Type Enterprise : A Case Study of Misawa Engineering Co., Ltd. in Aomori Prefecture, Japan

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抄録

本論文は、企業自身が主要な活動拠点とする地域経済の振興・活性化に貢献している中堅・中小企業を地域貢献型中小企業として着目し、その事業展開の特徴について経済・経営史的に分析することを課題とする。特に本論文では、三沢エンジニアリングを事例として取り上げ、[ 1 ]長野県飯田市での独立開業、[ 2 ] 青森県三沢市への企業移転、[ 3 ] 同地域における事業展開の3局面にそくした形で地域貢献型企業への発展過程について検討する。それにより、( 1 )創業者が独立以前に勤務していた多摩川精機は地域振興・貢献を企業理念に掲げる地域貢献型企業であり、そうした観点から飯田周辺地域における社員の独立開業を積極的に支援するインキュベーターとしての役割を担っており、三沢エンジニアリングの創業もそうした支援を受ける形で実現したこと、( 2 )それにもかかわらず同社は創業直後に三沢へと本拠を移転するに至るが、この移転に際しても多摩川精機による指導・助言がその経営判断に決定的な影響を与えたこと、さらに同社との長期継続的な取引関係が、精密機械産業の未発達な移転先での初期制約条件を克服し、経営を安定化するうえで不可欠であったこと、( 3 )1980年代以降は、その企業成長を通じて地域内の産業発展および雇用機会の創出に貢献するとともに、飯田地域に拠点をもつ企業(多摩川精機、同協力企業)の青森への進出をサポートすることで間接的にも地域産業の振興・発展に貢献する役割を担ったことを明らかにした。三沢エンジニアリングの事例は、サプライチェーン(SC)型企業の発展事例というにとどまらず、地域貢献型企業からスピンオフした企業が、地域貢献型企業の支援を受けつつ、新たな地域で地域貢献型企業として発展してきたケースとして重要な意味をもつということができる。

収録刊行物

  • 国際日本研究

    国際日本研究 13 1-18, 2021-03

    筑波大学人文社会科学研究科国際日本研究専攻

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