会計制度と文化変容 : ヨーロッパ連合に於ける財務報告書と会計方針開示制度の調和化

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  • カイケイ セイド ト ブンカ ヘンヨウ ヨーロッパ レンゴウ ニオケル ザイム ホウコクショ ト カイケイ ホウシン カイジ セイド ノ チョウワカ

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抄録

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文化基盤を共有すると思われるヨーロッパ連合の諸国間でも,会計制度の格差が依然存在している。現在の時点では,15カ国で編成されたこの共同体は単一市場時代を迎えたと言っても,まだ英蘭グループと仏独グループという会計系統に分けられるし,各国のレベルでも自分たち独自の文化様式と慣行から作られた会計規準が見られる。本論文はまず地域化と国際化の意図を実現させる前提条件として,会計を含む各国の間の法律と基準を調和させる重要さを述べたいと思う。1964年以来,ヨーロッパ連合の理事会と委員会がその方向に向かって,会社法と会計基準関連する指令と決定を数多く制定してきた。その中における一番重要な指令はすでに周知のとおり,個別財務諸表に関する第4号と連結財務諸表に関する第7号である。ヨーロッパ連合の加盟国はヨーロッパ指令の精神に沿った計量方法で計る努力義務があるにもかかわらず,その実情を見ると統一性はいまだに低く,時には対立的な姿勢も見られる。拙論の第二部はこの対立の例を幾つか挙げた。例えば固定資産の評価基準の選択になると,取得原価主義と取替価額で評価主義との対立,研究開発費の場合も,償却の対象になる資産計上と単純な経費と見られる損失計上の対立,などがある。キリスト教文化圏に属するヨーロッパ連合諸国の会計制度の不調和の根本的な原因とは,各国の頑固な会計国家主義だけではなく,論文の第三部に述べたさまざまな歴史,地理,風土,言語,法律,さらには社会組織原理と会社理念等,生活条件のさまざまな差異があるからであろう。そのバラバラな会計制度を結合するため,ヨーロッパ諸国は会計というサブ・カルチャー(sub-culture)だけではなく,会計以外の諸文化要素について吟味しなくてはいけない。既存システムはどんなに完璧といっても有利と不利な点があるであろう。英蘭システムは透明性,実践性で高く評価されると同じ様に,仏独システムは忠実性と真重性の良さがあるのであろう。以前よりもっと積極的に,人,物,サービス,思想の交流を進めると、文化変容の現象が起こるに違いない。文化変容はかならず制度の格差を減少することとなろう。但し,この文化変容は支配と被支配の関係(domination)から生まれたものではなく,協議精神からでき上がる公平的,平等的な融合(blending)であるという結論を出したい。

source:Josai international review

identifier:JOS-KJ00004422903

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