余華 少年期の記憶と支離滅裂な現実―『十八歳の旅立ち』及び《在细雨中呼唤》 (『雨の中の泣き声』)を中心に―

書誌事項

タイトル別名
  • Adolescent Memories and Incoherent Reality in the Work of Yu Hua : Focusing on Leaving Home at Eighteen and Cries in the Drizzle
  • 试论余华少年时期的记忆与混杂不堪的现实 - 以《十八岁出门远行》及《在细雨中呼唤》为中心-

この論文をさがす

抄録

9000018753668

余華、現代中国文学の中でも代表的人物の一人とされる作家。1980 年代のデビュー以来現在に至るまで中国文壇で活躍する時代の寵児的存在である。彼の代表作には『活きる』、『血を売る男』、《在细雨中呼唤》(「雨の中の泣き声」日本語版が無いため和訳は筆者によるもの)、『兄弟』、『死者たちの七日間』などの長編小説の他、多くの中短編小説がある。本稿では彼の作品の中でも1980 年代初期に書かれた短編小説『十八歳の旅立ち』及び1990 年代に入って書かれた長編小説《在细雨中呼唤》(「雨の中の泣き声」)の二作品を取り上げるが、後者の《在细雨中呼唤》(「雨の中の泣き声」)は作家余華にとって初めて手がけた長編小説である。この二作品はそれぞれ時代や物語の設定の上でかなり違いがあるものの、どちらも少年の視点を通し、少年の意識の流れや記憶の叙述により物語が語られて行く。本稿で取り上げるこの二作品の主な登場人物は、『十八歳の旅立ち』では「私」、《在细雨中呼唤》(「雨の中の泣き声」)では「孫光林」(スン・グァンリン)となる。ただ、後者のスン・グァンリンに関して言えば、主に語り手という立場で登場し、物語の展開において事実かどうかは別に彼の記憶する順番で物語が語られ、また曽祖母や祖父母など幼い頃聞いた話や人物等の逸話は、全てがスン・グァンリンの記憶のフィルターを通し真実として語られていく。 本稿では、「少年の視点」に着目し、『十八歳の旅立ち』の主人公「私」と《在细雨中呼唤》(「雨の中の泣き声」)の語り手及び傍観者「私」を通し、少年期における記憶や意識の流れを考察していく。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ