米中摩擦による日中間貿易・物流への影響

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抄録

本研究は,米中摩擦による日中間の貿易・物流への影響に焦点を当て,日本と中国の関連 統計に基づいて影響の実態を明らかにしようとするものである。主な検証結果は次のように 要約できる。 ① 米中摩擦が激化した2019 年に,中国の輸出も輸入も大きく失速したが,新型コロナの早 期抑制と経済活動の迅速な回復を果たした2020 年には,輸出が拡大に転じ,輸入も微減 にとどまった。一方,2019 年以降,日本は,輸出も輸入も顕著に縮小した。 ② 2019 年に,米国による「華為(ファーウェイ)禁輸」など通信機器関連製品に関する対 中輸出入規制の影響で,日中両国間の輸出も輸入も縮小したが,2020 年に,中国経済の V 型回復に伴い,日本から中国への輸出がプラス成長に転じた。 ③ 通信機器関連製品の輸出入額の減少によって,ICT 産業が集積している東京圏・関西圏の 主要港の輸送額の減少は他の地域の港よりも深刻である。また,日中間輸出入貿易の約3 割は航空輸送が支えているが,付加価値の高いICT 関連貨物の減少は,航空輸送の成長 に大きなマイナス影響を与えている。 ④ 九州のICT 産業も成長しつつあるが,禁輸対象企業との直接取引が比較的少ないので, 2019 年に九州の主要港(空港を含む)が受けた米中摩擦の影響は,東京圏・関西圏の主 要港ほど深刻ではない。また,2020 年に,経済活動がいち早く正常化した中国に近いと いう地理的優位性を生かし,九州の一部の港は逆境の中で国際輸送が伸びている。

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  • CRID
    1390572354724465280
  • NII論文ID
    130008145518
  • DOI
    10.20787/agishiten.32.1_16
  • ISSN
    1348091X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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