紙が演出した文明史上の交代劇

書誌事項

タイトル別名
  • Revolutions in the History of Civilization Induced by Paper
  • 紙が演出した文明史上の交代劇(第10部)ヨーロッパへ渡った紙
  • カミ ガ エンシュツ シタ ブンメイ シジョウ ノ コウタイゲキ(ダイ10ブ)ヨーロッパ エ ワタッタ カミ
  • Part10:Developments in Europe
  • 第10部 ヨーロッパへ渡った紙

この論文をさがす

抄録

<p>イスラムが8世紀に紙を手にし,統治の手段として活用,さらに,それまでの文明を記録・保存,指数級数的に紙の使用量を増やした。中心地のCairoでは製紙産業が隆盛を誇り,book marketが栄えた。</p><p>一方,ヨーロッパは,ローマ帝国が崩壊(372–410年)後,異民族の侵入,人口減少,交易の衰退,移民の増加が続いた。しかし,10世紀には反転し,大幅な人口増,経済成長により科学と哲学の復興が始まった。その頃からヨーロッパで紙の歴史が始まる。1100年代にスペイン(イスラム),シシリーでは紙が生産されていた。1000-1300年にかけて,ヨーロッパの各地で紙の使用例が見つけられている。13世紀にイタリアで製紙工場が生まれる。その技術がアルプスを越えたドイツで広がり,さらに英国まで渡る。</p><p>この時代,ヨーロパは,イスラムに対して鉱山開発と金属加工に優れていた。その技術による金網を張った手漉きモルド,金属カバーのstamperを開発,さらに,ゼラチン含浸を含め,製造コストを削減したイタリアが,香料や絹との交換貿易の商品としてアラブへ売り込んだ。18世紀には,Cairoはヨーロッパの紙のアラブへの中継基地に過ぎなくなり,bookmakingも衰えていった。</p><p>一方,ヨーロッパでは,経済の拡大,文明の復興等から,紙の需要が増加,さらに,複写需要から15世紀に金属活字による印刷システムを開発した。その後,紙と印刷システムはヨーロッパの社会革命の原動力となっていく。</p><p>併せて,ヨーロッパにおける紙の生産技術を概説する。</p>

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 75 (11), 1010-1016, 2021

    紙パルプ技術協会

参考文献 (1)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ