両側延髄内側梗塞患者の呼吸器合併症予防に向けた多職種での関わり

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抄録

<p>【目的】</p><p>延髄内側梗塞の発生率は虚血性脳血管障害の約0.5 ~ 1.5%と極めて低い。そのうえ両側性となると発生率がさらに低く、誤嚥性肺炎の悪化や中枢性呼吸不全が進行し予後不良な経過を辿るといわれている。そこで今回、入院早期から理学療法を開始し、作業療法士( 以下:OT)、言語聴覚士( 以下:ST)、看護師や介護福祉士といった多職種と協働し、呼吸器合併症の増悪を予防する取り組みを行い、良好な転帰を得たのでここに報告する。</p><p>【症例紹介】</p><p>入院2 日前より気分不良あり、翌朝に嘔吐。午後に体熱感を認め救急外来へ受診。CT 上軽度の肺炎所見あり、抗生剤投与し帰宅。その翌朝より言語障害と体動困難あり、再度救急外来受診。MRI 上両側延髄内側梗塞の診断ありHCUへ入院。入院同日より理学療法を開始した。年齢:70 歳代、BMI:26.0。既往歴: 高血圧、2 型糖尿病、脳梗塞( 右小脳半球、左橋腹側、左視床、左基底核)。入院前ADL: 自立レベル。</p><p>【経過】</p><p>1 病日目。Japan Coma Scale: I -1。National Institutes of Health StrokeScale:18/42 点。Brunnstrom stage( 以下Br.stage)( 右/ 左) はIII / III - IV / IV -II / II。表在・深部感覚は構音障害や患者の協力が得られない事もあり精査困難だが脱失はなし。ST 評価より嚥下反射惹起不全を認め、唾液にてムセあり。特に仰臥位では唾液誤嚥のリスクが高かった為、側臥位でのポジショニングをST、看護師と統一し実施。側臥位でも口腔内には唾液が貯留する為、看護師は2 時間毎の体位変換と吸引を施行。構音障害があるが、患者が自ら発声し看護師に吸引を希望することもあった。発声以外のコミュニケーションツールの獲得を目的に作業療法開始。3 病日目より離床開始するが、中等度の運動麻痺と深部感覚障害を認め、車椅子への移乗は全介助レベル。食事は経管栄養療法が開始となった。10 病日目より一般病棟へ転棟。介護福祉士や看護師と適切な体位やリスク管理の統一化を目的にポジショニング表を作成し情報共有を行った。運動機能は徐々に向上し、Br.stage はIII / III - V / IV - IV / II。18病日目にはナースコールを使用し発声以外での訴えが可能となった。痰や流涎の量は減少し、嚥下造影検査を施行。翌日より昼食のみ開始( 嚥下調整食2-1)となった。昼食以外は経管栄養継続であり、OT、看護師と協力し車椅子座位で経管栄養を行えるよう調整した。28 病日目、Br.stage はIII / III - V / IV - IV/ IIIと僅かに改善。感覚障害は表在・深部ともに改善はみられず、中等度の感覚障害が残存した。Barthel Index は0 点と入院時と変化はなかった。29 病日目に回復期病院への転院となった。</p><p>【考察】</p><p>先行研究より延髄内側梗塞による死亡率は23.8%であり、予後に影響する因子として舌下神経麻痺、嚥下障害や両側性病変、高齢、入院時の重度の運動障害が挙げられるとの報告あり。なかでも誤嚥性肺炎が最多であるとの報告もあり生命予後不良の疾患である。今回、発症早期からリハビリテーションスタッフが身体機能や種々のリスクを把握し、関係職種への情報共有、介入方法の提案などを積極的に行い、共有することで誤嚥性肺炎を予防することができたと考える。また、自施設のみでなく、転院先の回復期病棟やその後生活される場所・施設等に対し各々の時期で評価を専門的に行い、情報提供・共有を行うことでハイリスク症例でも呼吸器合併症予防を行え、生命予後改善に寄与することができると考える。患者に関わる職種と情報共有することの重要性を再認識することができた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本症例報告は当院倫理委員会にて承認されており、利益相反はありません。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390572433059819648
  • NII論文ID
    130008154563
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2021.0_1
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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