シミュレーションモデル(PADDY-Large)と種の感受性分布(SSD)を用いた複数の農薬使用に伴う累積的生態リスク評価手法の開発: 茨城県南部桜川支流域における水稲栽培への適用

  • 稲生 圭哉
    国立研究開発法人農研機構 農業環境変動研究センター
  • 永井 孝志
    国立研究開発法人農研機構 農業環境変動研究センター
  • 横山 淳史
    国立研究開発法人農研機構 農業環境変動研究センター
  • 岩崎 亘典
    国立研究開発法人農研機構 農業環境変動研究センター
  • 堀尾 剛
    国立研究開発法人農研機構 農業環境変動研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Cumulative ecological risk assessment of pesticides using a simulation model (PADDY-Large) and species sensitivity distribution (SSD): Application to a tributary of the Sakura River under rice cultivation
  • シミュレーションモデル(PADDY-Large)ト タネ ノ カンジュ ショウブンフ(SSD)オ モチイタ フクスウ ノ ノウヤク シヨウ ニ トモナウ ルイセキテキ セイタイ リスク ヒョウカ シュホウ ノ カイハツ : イバラキケン ナンブザクラガワ シリュウイキ ニ オケル スイトウ サイバイ エ ノ テキヨウ

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抄録

<p>近年,化学合成農薬と化学肥料の双方を,慣行栽培に比べて5割以上削減した特別栽培が推進されている.また,環境省では様々な農薬の流出防止技術(農薬処理時の水管理に係る留意事項,適切な畦畔管理など)を推奨している.本研究では,慣行栽培から特別栽培への農薬使用の変更や,慣行栽培における農薬流出防止対策の導入によるリスク低減効果を相互に比較するため,水稲栽培における農薬使用に伴う水域生態リスクを定量的に評価する手法を開発した.既報のPADDY-Largeモデルを用い,茨城県桜川の支流である逆川流域において,慣行および特別栽培で使用する各農薬の河川水中予測濃度(PEC)を計算した.また,既報の累積リスク計算ツール(NIAES-CERAP)に各農薬のPECの最大値を入力し,複数農薬により影響を受ける種の割合(msPAF)を計算した.殺虫剤のmsPAFは慣行栽培(3成分使用)での16%に対し,2成分を節減した特別栽培では0.5%と小さくなった.一方,除草剤のmsPAFは慣行栽培(4成分使用)の14%に対し,特別栽培(3成分使用)では20%とリスクが高くなる結果となった.特別栽培で使用する2成分は,慣行栽培で使用しない異なる有効成分に切り替わっており,有効成分の組み合わせにより,特別栽培のリスクが高くなる場合も想定された.殺虫剤,殺菌剤,および除草剤のmsPAFの平均値であるOverall PAFは,慣行栽培の10%に対し特別栽培では7%に減少し,農薬を節減したことによる生態リスクの低減効果を定量的に示すことができた.また,慣行栽培において,水管理に係る留意事項を徹底することにより,Overall PAFは8%に,加えて畦塗りの徹底により6%となり,特別栽培と同程度まで減少した.Overall PAF値で比較すると,本研究で用いた4段階の判定基準ではすべて「リスク中」に分類された.</p>

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参考文献 (17)*注記

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