2011年3月福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の事例におけるエアロゾル雲内洗浄過程の不確実性

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  • Uncertainty in Aerosol Rainout Processes through the Case of the Radioactive Materials Emitted by the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant in March 2011

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抄録

<p> エアロゾル湿性沈着の雲内洗浄過程は、特に微小粒子のシミュレーションに大きな不確定性を生じさせる。本研究では、非静力学正20面体格子大気モデルであるNICAMに、4つの異なる雲内洗浄スキームを導入して、2011年3月に起きた福島第一原子力発電所事故に伴う放射性セシウム137(Cs-137)の粒子動態に関するモデル相互比較を実施した。導入した雲内洗浄スキームの1つは、全球気候モデル(GCM)で用いられる手法であり、単純なチューニング変数を用いて除去定数を決めるものである(GCM-Type)。2つめは、降水の予報変数化や現実的な鉛直輸送を考慮した雲解像モデル(CRM)に最適化したスキームである(CRM-Type)。3つめは、地表面降水フラックスを用いて擬一次近似の仮定で表現した伝統的なスキームである(CONV-Type)。4つめは、オフライン化学輸送モデル(CTM)で用いられており、雲・降水フラックスや簡略化されたパラメータ分析アプローチを用いたものである(CTM-Type)。多くの実験結果では、シミュレーションしたCs-137を観測結果と比較すると、±30%のバイアス、0.6-0.9の相関係数、67-112Bq m-3の不確実性、<40%の精度(1/10から10倍の範囲に収まる値の割合)となった。CRM-typeでは最適な結果が得られたが、その結果を得るためにチューニング変数の下限値を用いる必要があった。GCM-typeとCONV-typeでは適切なチューニング変数を設定すれば、適用可能なスキームであることもわかった。CTM-typeでは相関が良く、不確実性が小さかったが、大きな負のバイアスが存在した。これらの解析から、NICAMで計算している雲粒から雨粒への変換効率が過大評価であることが示唆された。しかし、これは単純に雲微物理モジュールを変えるだけでは解決しない問題である。エアロゾル雲内洗浄スキームの感度は、雲微物理の取り扱いの感度よりも、Cs-137への影響が大きいこともわかった。したがって、観測で得られたCs-137の空間分布を再現するためには、適切な雲内洗浄スキームの利用と共に、より良い気象場を利用することが不可欠である。</p>

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 100 (1), 197-217, 2022

    公益社団法人 日本気象学会

参考文献 (52)*注記

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