在宅療養高齢者の慢性高張性脱水に関する予備的疫学調査

DOI オープンアクセス
  • 東村 志保
    東京大学大学院医学系研究科附属グローバルナーシングリサーチセンター
  • 玉井 奈緒
    東京大学大学院医学系研究科附属グローバルナーシングリサーチセンター 東京大学大学院医学系研究科社会連携講座イメージング看護学
  • 仲上 豪二朗
    東京大学大学院医学系研究科附属グローバルナーシングリサーチセンター 東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻老年看護学/創傷看護学分野
  • 戸部 浩美
    東京大学大学院医学系研究科附属グローバルナーシングリサーチセンター
  • 真田 弘美
    東京大学大学院医学系研究科附属グローバルナーシングリサーチセンター 東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻老年看護学/創傷看護学分野

書誌事項

タイトル別名
  • A pilot epidemiological study on chronic dehydration of older adults in home care setting

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説明

背景:高張性脱水は水分や塩分の喪失で生じる血清浸透圧の上昇である.高齢者は脱水に陥りやすいが,地域における有病率の報告は少ない.本研究は在宅療養高齢者における高張性脱水の有病率を明らかにすることを目的とした.方法:在宅療養高齢者33 人を対象に横断的観察研究を行い,基本属性のほか,認知機能や血液データなどを調査した.結果:研究対象者は84±6 歳で,72.7%が女性だった.血清浸透圧は22 人(66.7%)が291 mOsm/L 以上であり,急性脱水のエピソードはなかった.脱水の有無に対する症状の感度と特異度は,77.3%と18.2%であった.認知機能は血清浸透圧と逆相関し,水分摂取量は要介護度で異なっていた.結論:在宅療養高齢者における高張性脱水の高い有病率が明らかになり,慢性脱水の存在が示唆された.認知機能や身体機能が比較的保たれた高齢者では,脱水のリスクが看過される可能性が考えられた.<br><br>【キーメッセージ】<br>1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?<br>  研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?<br>→ 脱水というと暑熱環境下での急激な水分の喪失や熱中症が想起されるが,高齢者では寒冷期においても知らぬ間に症状もなく陥る慢性脱水が蔓延しているといわれており,今後の看護理工学的取り組みが期待される.本研究はそうした慢性脱水への取り組みの基盤を形成するものである.<br><br>2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?<br>→ 本研究から,秋季でも在宅療養高齢者の約6割が慢性脱水あるいはそのリスク状態にあることが明らかにされ,早急な取り組みの必要性が示された.<br><br>3.今後どのような技術が必要になるのか?<br>→ 身体症状に乏しい慢性脱水の早期同定方法の開発が喫緊の課題である.また,急性脱水とは異なる慢性脱水の病態解明も望まれる.

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