紙が演出した文明史上の交代劇

書誌事項

タイトル別名
  • Revolutions in the History of Civilization Induced by Paper
  • Part 11:Innovations and Revolutions in Europe Induced by Paper
  • 第11部 紙が促した社会変革

抄録

<p>14世紀になると,ヨーロッパで紙の生産が始まり,時期を合わせて,社会がダイナミックに動き出す。</p><p>イタリアに始まるルネッサンス(14世紀中ごろから16世紀)で膨大な文献が翻訳,研究されるが,その紙の需要に,生産性と品質を改善したイタリアが答えた。</p><p>イタリアの技術がフランス北部の新教徒に伝わり,フランスが最大の生産国となる。ルネッサンスで生まれた理性を信じる考えから宗教改革(1517年)が始まる。ここでは大量の印刷物が発行され,a media revolutionと呼ばれた。これを支えたのがフランスの紙であろう。このフランスの技術は,ナントの勅令の廃止(1685年)によりヨーロッパ各地に広がる。</p><p>それに続いて,フランスを中心に啓蒙時代(17世紀後半より)となり,書籍が日常的なものとなる。オランダがHollander beaterを開発,ストダウンに成功し,ヨーロッパ最大の製紙国となり,紙を輸出・供給した。</p><p>紙が支えてきた知的活動が産業革命(1760-1840年)としてイギリスに結実する。技術を汎用化し,情報の交換に寄与した紙は,新たに力をつけたイギリスの製紙産業が供給した。</p><p>製紙産業の興隆が,その地域で起きた経済発展とそれに続く社会変革と連動している。紙作りという単純な作業が,社会変革の壮大うねりと結びつき,意味のある存在であった。</p>

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 75 (12), 1137-1142, 2021

    紙パルプ技術協会

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