《総説》身近な地学現象の物理 : なぜ細かい粒子はゆっくり堆積するのか?

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タイトル別名
  • A review on physics of familiar geoscientific phenomena: Why are fine grains deposited slowly?
  • ソウセツ ミジカ ナ チガク ゲンショウ ノ ブツリ : ナゼ コマカイ リュウシ ワ ユックリ タイセキ スル ノカ

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抄録

身近な地学現象である『なぜ細かい粒子はゆっくり堆積するのか?』を理解するためには,水や空気などの流体の中を落下する粒子に働く力として,重力と浮力の他に,粘性による抗力を考える必要がある。粒子を球体に近似できるとすれば,ストークスの法則により,粒子に働く抗力は,粒子の直径,粘性率及び落下速度に比例する。抗力は落下速度と共に増大し,これら3つの力が釣り合った時に落下速度は一定となり,粒子は一定速度のまま堆積する。この一定速度を終端速度と呼び,3つの力の釣り合いから求めることができる。粒子の終端速度は,粒径の2乗及び粒子と流体の密度差に比例し,粘性率に反比例する。従って,粒子の密度が同じであれば,細かい粒子ほど終端速度は小さくなり,ゆっくり堆積することになる。このことは,水中だけでなく空気中でも成り立つが,空気の粘性率は水の粘性率の約1/100 であるので,空気中では粘性の影響が現れにくい。落下させる物体のサイズを極端に違うものにするか,落下させる距離を極端に長くしなければ,終端速度に違いは出にくい。一方,風船が空気中を落下する場合には,風船のサイズが大きい程,風船の密度は空気の密度に近づき,空気との密度差がゼロに近づくために終端速度は小さくなり,ゆっくり落下する。風船の場合,終端速度に与える効果は,サイズよりも空気との密度差の方がずっと大きい。

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