近世障害者史研究の成果と課題 : 生瀬克己の研究を事例に

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タイトル別名
  • Results and Issues of Modern Historical Studies on Disabled People: Using the Research of Katsumi Namase as a Case Example

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抄録

障害学の議論のなかで歴史研究に注目されたり、障害史研究が登場したりと、近年は近世以前も含めて障害者の歴史研究が盛んになっている。ただしそういった近年の研究では、1990年代まで先行研究の議論が十分評価されていない。そこで本稿ではそれらのうちより生瀬克己の研究について、その成果とともに課題も確認した。障害当事者である生瀬は、近世の障害者の人口や領主による保護や障害観など、多様な視角から障害者の歴史を明らかにした。またはじめて障害種別ごとではなく「障害者」の歴史の研究という枠組みを示したり、障害者関連の史料を収録した史料集を編纂したりといった、それまでの研究にはない大きな特徴や成果を残した。一方で本稿では、生瀬の議論には関心が障害者差別へ偏るあまり、具体的な暮らしの実態解明が進まない、「障害」という名の差異でしか差別の原因を説明できていないなどの課題がみられること、また近世の人々が障害者に対して示した態度にみられるという「差別 対 友愛」という構図に実証性の不十分さがあることや、地域性を考慮していない点なども指摘した。そのうえで本稿では、今後の障害者の歴史研究の参考として、結婚等の暮らしの実態解明、差別と友愛は一体であるとの見方、権力の意向をそのまま現実のものと捉えず相対化して考えてみるといった視点を、事例を交えつつ提示してみせた。

収録刊行物

  • 障害史研究

    障害史研究 3 17-30, 2022-03-25

    九州大学大学院比較社会文化研究院

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390573242652750080
  • NII書誌ID
    AA1183013X
  • DOI
    10.15017/4772323
  • HANDLE
    2324/4772323
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • IRDB
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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