地方自治体における不祥事に関する実証分析-不祥事の動機の違いに着目して-

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  • チホウ ジチタイ ニ オケル フショウジ ニ カンスル ジッショウ ブンセキ : フショウジ ノ ドウキ ノ チガイ ニ チャクモク シテ

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抄録

<p><tt> 本研究の目的は,近年の公務員改革に伴う人事管理・給与上の処遇の変化を踏まえた上で,地方自治体における不祥事の目的の違いに着目して,その発生要因を定量的な実証分析により明らかにすることにある。</tt></p><p><tt> 実証分析では,</tt>2006 <tt>年度から</tt>2013 <tt>年度までの都道府県パネルデータを用いて分析を行ったところ, ①金銭的な利得を目的とした不祥事と金銭的な利得を目的としない不祥事のいずれについても,地方公務員の給与水準が相対的に低くなる状況下でより多く発生する,②金銭的な利得を目的としない不祥事は,全職員に占める管理職比率が低くなる,もしくは管理職適齢期にある</tt>50<tt>歳代職員に占める非管理職比率が高くなる状況下でより多く発生するものの,退職金の水準を高く維持することでその増加が緩和される,との二つの主要な結論を得た。</tt></p><p><tt> 得られた結論から,金銭的な報酬の多寡が不祥事の発生要因となる一方で,職員の年齢構成の偏りや組織変革の進展に伴う昇進可能性の低下が,特に勤務不良などの金銭的な利得を目的としない不祥事の発生要因となっていることが示唆される。既存の実証研究では,わが国の地方公務員による汚職や不祥事の発生に対して,給与水準の多寡が一般的に影響を与えるものと考えられてきたが,本研究によって給与水準以外の要因が不祥事の発生要因となり得ること,並びに不祥事の原因と結果の関係が複数存在していることが明らかとなった。</tt></p><p><tt> 以上,わが国の地方自治体における不祥事の発生メカニズムに関して,新たな発見事実がもたらされており,学術上の少なくない貢献があるものと考えられる。</tt></p>

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