河川氾濫時の避難行動シミュレーション

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Simulation of Evacuation Behavior in the Event of River Flooding
  • A Case Study of Tomsk City, Russia
  • ロシア・トムスク市を事例に

抄録

<p>1.  はじめに</p><p> 人間の社会は、河川と結びついて発展してきた。これはロシアでも同様である。ロシアの河川では流量の季節変化が見られ、大部分で春の増水を伴う。これは融雪水によるものが多く、ロシアにおいては水文学的季節現象の最大なものであり、経済のあらゆる分野に影響を及ぼす。また春の増水期にはアイスジャムと呼ばれる独特の現象が発生し、北に向かう河川の下流が結氷しているにも関わらず上流は融氷するために結氷部分と融氷部分の境界で氾濫が起こる(倉嶋, 1963, 水利科学)。本研究対象地域のトムスク市は、人口およそ57万人、面積295㎢であり、シベリア西部の西シベリア低地、トム川とオビ川の合流点の上流約50㎢に位置している。トミ川はシベリアを流れるオビ川の支流であり、モンゴル・ロシア国境のアルタイ山脈を源流とする、トムスク州内の流路延長827㎞、流域面積6,200㎢の河川である。市内には東西に流れるウシャイカ川とトムスク市の西側を南北に流れるトミ川がある。近年では2010年にトミ川流域で大きな被害が生じた。そのためトムスク市を対象とした防災対策の必要性が増している。本研究ではトムスク市内を流れるウシャイカ川周辺を対象として、氾濫モデルの作成及び住民の避難行動に関するネットワーク分析を行った。</p><p></p><p>2.  データ・分析手法</p><p> OpenStreetMapから対象地域の道路データ・建物データをダウンロードし、NASAが提供しているSRTMから対象地域の20mメッシュに投影変換した数値標高データを用いた。また、トムスク市を含めた各属性が含まれている土地被覆データを利用して、氾濫モデルで使用するための粗度係数の値を設定した。氾濫モデルでは、広がりのある水の動きを追跡できる点が特徴であるdynamic wave model に基づく2次元不定流解析を用いた。  避難行動は、住民の属性を入手できなかったため、居住目的に供する建物を基準にし、最寄りの避難場所に到着するまでのシミュレーション行った。その際に避難場所数の数を変化させた2パターンのシミュレーションを行い、それぞれ洪水発生前、2時間後、4時間後、6時間後で分析を行った。そして洪水発生後のトムスク市内の移動について調べるために各避難場所から各病院までの移動時間も算出した。この際も洪水発生前、2時間後、4時間後、6時間後で分析を行った。</p><p></p><p>3. 結果 </p><p> 洪水発生と考察4時間後の避難行動シミュレーションを図1に示す。氾濫モデルでの初期値は水が流れていない状態であるため、洪水発生4時間でウシャイカ川の洪水流がトミ川に合流した。そしてウシャイカ川の洪水流は洪水発生後6時間後までは湛水域が拡大したが、6時間後以降では大きな変化は見られなかった。</p><p> 避難行動においてはトムスク市内を東西に流れるウシャイカ川がトミ川に合流した4時間後以降は、ウシャイカ川の洪水流により、トムスク市が南北に分断される。避難建物数においても洪水発生4時間後でおよそ1,000棟以上が避難不可能となった。そのためウシャイカ川が氾濫を起こす前に避難しなければ、ウシャイカ川の洪水によって南北間の移動が困難となってしまう。また、住民の属性での分析によっては避難に時間がかかることが予想される。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390573242722246528
  • DOI
    10.14866/ajg.2022s.0_78
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ