堆積環境による干拓地土壌の特徴づけ

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  • Characterizing polder soils by sedimental environment

抄録

<p>1.はじめに </p><p> 干拓は、一様に海や湖沼の堆積物を排水によって干上げ陸化しているものの、国内の干拓地は干拓後の経過年数や土地利用は異なり、全国に分布しているため地理的条件も異なる。そのため、干拓地ではこれらの条件に基づく特有の土壌特性を持つと考えられる。一方で干拓地の土壌生成に関わる研究は、同一干拓地内における土地利用の違いや干拓してからの経過年数に基づく継続した土地利用による土壌発達に着目したものが多くを占め、干拓地間の比較研究による人為以外の土壌生成に関わる因子と土壌との関係については明らかになっていない。そこで本研究では干拓地の土壌生成とその因子への理解の向上を目的として、日本に分布する干拓年数や土地利用の異なる干拓地の土壌特性を比較し、日本の干拓地に共通して生じる土壌生成と条件によって異なる発達を明らかにすることを試みた。</p><p>2.方法 </p><p> 対象地は、汽水湖の干拓である秋田県八郎潟干拓地、岡山県の児島湾および笠岡湾干拓地、長崎県諫早湾干拓地で、それぞれの干拓地から、土地利用や干拓後の経過年数の異なる2から4地点で調査を行った。各地点で土壌断面調査を行い、分けられた土壌層位ごとに試料を採取、理化学性の分析を行った。分析項目は電気伝導度 (EC)、pH、強熱減量法による有機物量 (SOM)、ピペット法による粒径組成、全炭素 (TC)、全窒素 (TN)、選択溶解法による形態別の鉄酸化物である。さらに分析したデータを用いて主成分分析を行い、干拓地の特徴づけを行った。主成分分析の変数にはEC、pH、気相率、TC、TN、粘土とシルト含量に対する粘土の割合、ジチオナイト―クエン酸塩還元抽出法による酸化物中の鉄含量、鉄活性度、SOM、土壌の物理的未熟性を表すn値を用いた。</p><p>3.結果と考察 </p><p> 粒径組成の結果より、八郎潟および諫早湾の土壌は粘土含量が多い一方で、笠岡湾および児島湾は比較的砂含量が多いことから、八郎潟や諫早湾は笠岡湾、児島湾に比べて干拓前は停滞した環境下にあったと考えられた。</p><p> 主成分分析の結果、第一主成分(PC1)は42%、第二主成分 (PC2) は23%の寄与率を得ることができた。主成分負荷量について、PC1はpHと負の相関、 TC、TNおよびSOMと正の相関があることから、値が低いほど有機物の蓄積と酸性化していることを示す指標と考えられた。PC2はECおよび値が高いほど土壌が物理的に未熟であることを示すn値と負の相関、気相率と正の相関があることから、値が高いほど干拓排水による土壌の乾燥化及び海水塩の溶脱の進行を示す指標と考えられた。主成分得点について、PC1は同一干拓地内で類似した値を示し、その深さ方向への値の変化も干拓地ごとに異なることから、各干拓地の立地環境を示していると考えられた。特に八郎潟は下層ほど値が低く酸性化していることから、干拓前の停滞した環境下で生じたパイライトが干拓により陸化し、酸性化した状態を示していると考えられた。さらに上層ほど値が高いことから、干拓後の継続的な排水によって硫酸塩が上層では溶脱している様子も見られた。PC2はどの土壌も一様に下層ほど低い値を示す傾向があり、排水による土壌物理性の発達は上層から下層に向かって生じ、干拓地共通の発達過程であると考えられた。</p><p> 本研究の結果から、干拓地土壌の発達過程について、程度は異なるものの、干拓地の条件を問わず共通して生じている干拓や土地利用の排水による土壌物理性の発達(PC2)と、干拓地の地理的条件によって特徴づけられ、各干拓地固有に生じる発達(PC1)に区別することができた。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390573242730095232
  • DOI
    10.14866/ajg.2022s.0_121
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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