小学校における防災教育のカリキュラム上の位置づけと留意点

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タイトル別名
  • The meaning of the disaster education in the elementary school curriculum

抄録

<p>Ⅰ はじめに</p><p> 学校教育では教科内容から生活指導まで,様々な側面で防災教育に取り組んでいる.教科教育における防災教育は,自然災害を発生させる自然現象のメカニズムの説明から,それに対する社会の側の対応,生活面での対応について教科の特性に応じて取りあげるため,ほとんどの科目で何らかの災害に関連する要素を取り扱うことになる.また,学校によっては総合的な学習の時間で災害,防災を取り上げ,体験的な学習活動を実施することも少なくない.また,安全教育を実施するために,身体を動かす防災訓練などで安全指導が行われ,多様な防災教育が行われている.</p><p> 防災教育に対して研究者や市民からの授業実践の提案が学校に対して行われ,さまざまな実践が行われてきた.しかしながら,児童の発達段階に合致した教材でなければ,その場で何らかの活動はできたとしても,理解が定着はしないであろう.この報告では防災学習に対して児童の発達段階を考慮したカリキュラムの位置づけを検討する.</p><p>Ⅱ 小学校の防災教育 </p><p> 地理と関連が深い小学校社会科の教科書や地図帳をみると,防災については数多くの記載がある.自然環境を反映した暮らしを学ぶ中には自然災害に対する地域の対応を学ぶ部分がある.郷土を学ぶときにも,地図を活用しながら過去の災害を学ぶ機会は少なくない.地図帳を見ても防災対応施設の分布や災害についての主題図が掲載されている.このように教科書や地図帳を見る限り,十分な内容の防災学習の要素が盛り込まれているように感じられる.</p><p> 小学校は教科担任制ではなく担任が基本的には全教科を担当し授業を実施する.教科をまたぎながら防災学習を展開する先生もいるかもしれない.しかしながら,教員は防災の専門家ではないし,防災だけを授業するわけではないため,教科書などに誘われ,さらに郷土学習教材に誘われて防災に取り組むことになる. </p><p> その際,小学生の発達段階を考慮した防災学習が必要になる.</p><p>Ⅲ 小学生の特性と防災学習の可能性</p><p> 児童の生活体験を考慮した防災学習を考えるとき,寺本(2000)が提案するまちづくり学習の考え方が参考になる.学年進行とともに社会的な発達や空間認知の発達に伴い,授業で取り上げる範囲や達成する目標を発展させている.低学年では地域に愛着を,中学年では共感を,高学年に移行するに従い,参加,提案ができるようにまちづくりを学んでいく設定になっている.防災に関しても同じように考えることができる.防災学習でも自分の暮らす地域へ愛着を持つ段階は同じである.近隣地域の災害を学び,かつての人々が困難を抱え乗り越えてきたことに共感し,地域を守る,命を守ることに共感するのが中学年である.そして,それらを踏まえて防災活動に参加し,そして災害に強いまちづくりについて提案するのが高学年の段階である(図1).</p><p> 取り上げることのできる空間スケールは発達段階に伴い変化し,低学年では身近な地域を,それが次第に市町村レベル,県レベルと拡大し,国土全体を対象にするのが5,6年生であろう.このような発達段階に従った,そして教科書の防災学習のコンテンツに寄り添った防災教育の提案が必要になるであろう.</p><p> このような児童の特性を丁寧に把握し,児童の理解を促していくことにより,生涯にわたって関わり続けなければならない防災を学ぶ基礎を築くことができるのではないだろうか.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390573242737886208
  • DOI
    10.14866/ajg.2022s.0_126
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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