「地理総合」に向けた「国際理解と国際協力」の単元における授業実践

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書誌事項

タイトル別名
  • Class practice in the unit of "international understanding and international cooperation” in Geography
  • Comparative regional geography of Southeast Asia and Africa using network in interrelations and image maps
  • -関係構造図・イメージマップを用いた東南アジア・アフリカの比較地誌-

抄録

<p>2022(令和4)年度より全国の高等学校で「地理総合」が実施される。2018年3月告示の高等学校学習指導要領(以下,新指導要領)の「地理総合」に関する内容では,「A地図・地理情報システムで捉える現代社会」「B国際理解と国際協力」「C持続可能な地域づくりと私たち」の3つの大項目から構成される。それに伴い,大学側や現場である高等学校の地理担当者などとで,教材開発や指導方法について多くの議論がなされてきた。</p><p> 発表者は,2019年度に鹿児島県教育委員会の事業で,授業や指導方法の改善を目的とした『アクティブラーニング研究開発プログラム』のAL研究員に任命され,先進校視察や研究授業などの研修を行った。先進校視察で,千葉県の県立高校と私立高校の2校を訪問して,両校の地理担当者から指導・助言を頂いたなかからヒントを得て,新指導要領の「B国際理解と国際協力」で授業開発を行った。 この授業開発を行うなかで,中村(2018)の「関係構造図」の手法を引用して,7時間分の単元指導計画を立てた。「関係構造図」は,自然地理と人文地理の複雑な地理的要素間の関係と全体の構造を表すため,地域全体の理解させる地誌学習においては有効な手法であると考えた。また,地域を総合的に俯瞰し,地域の様々な諸課題を浮き上がらせ,その解決方法を考察・提言するためには,地誌学習で身につけた各地域の知識・技能を活用することが,最も有用であると考える。そこで地誌学習から国際理解に繋がるきっかけになるような単元構成を行った。 本単元では,アフリカと東南アジアの2地域を取り上げ,現行学習指導要領に記された「動態地誌」と「比較地誌」をベースに授業を展開し,両地域の持続可能なプランテーション農業を行う上で,我々がどう行動すれば良いかを考察するなかで,自分自身で社会との関連性を見いだし,生徒の近い将来の社会参画へのきっかけを促せるような授業を目指した。</p><p> 開発した授業は,2019年は前任校で,2020年と2021年は現在の勤務校で実施した。2019・2020年度は研究授業(2019年度はAL研究員,2020年度は中堅教諭資質向上研修)として,2021年度は通常授業のなかで行った。 </p><p> 2019年・2020年は中村(2018)のとおりに,地形,気候,土壌,農業,経済,宗教,その他などの要素の基図を準備して,予め教科書を読ませて,教科書本文中のゴシック体を付箋紙に書かせて,付箋紙を基図に貼付けた後,関係するワードを繋ぎ合わせて,東南アジア・アフリカの地域概観を構造化する作業を行った。2021年は,「関係構造図」を理解して取り組ませるには少々難しさを感じていたので,「イメージマップ」に代えて地域のイメージの構造化に取り組んだ。イメージマップ作成に際して,関連し合う事象を結びつけるように生徒には指示した。「関係構造図」・「イメージマップ」を作成して,下表のように3限目以降の授業内容で生徒たちの知識を深める作業とプランテーション農業における課題認識を持つ授業展開を行った。</p><p> 高校卒業後,社会を構成する一員として大切な一人の人間であり「自分自身どのように生きて行くか」を育みたいと意図した。生徒たちが社会参画に向けた意識づくりはある程度醸成できたと感じた一方で,「フェアトレードの商品を購入したい」などの解答が多く,個人の変容の意見は散見されたが,当事者意識であったり,社会の変容を促すなどの意識を持つまでは至らなかったように感じる。イメージマップ作成においても生徒からのアンケートから「それぞれの事象の関係性を見つけて繋げることが難しい」という解答が多く見られ,イメージマップの作成が難しいと感じた生徒は71%であった。2年間の関係構造図の作成においても同様であった。生徒の思考の構造化を行いやすくするための授業方法についてはさらに研鑽を深める必要がある。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390573242737915264
  • DOI
    10.14866/ajg.2022s.0_149
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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