周囲環境ならびに急激な環境変化がマウス行動に及ぼす影響

  • 助川 桃枝
    京都大学生命科学研究科 理化学研究所生命機能科学研究センター(BDR) 京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)
  • 吉原 亨
    京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設
  • Hou Shengqun
    京都大学生命科学研究科 理化学研究所生命機能科学研究センター(BDR) 京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)
  • 浅野 雅秀
    京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設
  • Hannan Anthony
    University of Melbourne Melbourne Brain Centre
  • 王 丹
    京都大学生命科学研究科 理化学研究所生命機能科学研究センター(BDR) 京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)

抄録

<p>環境要因は遺伝要因と相互作用して我々の行動を形作る。しかし,特定の環境と個人の行動の繋がりは未だ解明途上である。本研究では,BALB/c系統マウスにおいて飼育環境を操作し,環境要因が行動に及ぼす影響を検討した。BALB/cは遺伝的に周囲環境への感受性が高く,そのような特性を持つヒトのモデルとなりうるとされる。実験1では「豊か」「通常」「社会的孤立」飼育環境の影響を行動テストバッテリーで評価した。実験2では豊か環境から通常環境に動物を移行し(「豊かな環境の除去」),この急激な落差の影響をホームケージ内行動の定量により評価した。結果,飼育環境は,聴覚や痛覚から,ストレス対処戦略,学習・記憶に関する課題まで,課題遂行に影響した。また,豊かな環境の除去は,攻撃行動の増加や昼夜間の活動量変化といったstressed/frustrated様行動を引き起こした。本研究は,BALB/c系統マウスにおいて,環境要因が多領域に渡る機能の変容を引き起こすことを示唆した。さらに,豊かな環境を失うことはヒトのみならずマウスでも強いストレッサーであることを示し,動物モデルにより環境変化の影響を検討する一歩となる。</p>

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