生薬カンゾウの国産化を目指した隣国での新品種作出動向

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抄録

生薬カンゾウ(甘草)は一般用漢方製剤294処方のうちの212処方に配合され,我が国で最も使用量の多い生薬であるものの,その全てを中国など海外からの輸入に頼っている.2008年度には1,261.2tであった使用量が2018年度には1,758.9tに増えているにもかかわらず,この間,中国での天然資源枯渇や自国内消費の増加にともない輸入価格は上昇の一途をたどっている.第十八改正日本薬局方において,カンゾウはマメ科に属するGlycyrrhiza uralensis(以下GU)またはG. glabra(以下GG)の根およびストロンを基原とし,グリチルリチン酸2.0%以上を含むことと定められている.これらのうち,我が国ではGUを基原とするカンゾウが流通していることから,カンゾウの国産化を目標としてGUを用いた高グリチルリチン含量の選抜育種が進められ,2014年のʻ都1号ʼ(日本における品種登録第23547号)や2017年のʻGlu-0010ʼ(日本における品種登録第26332号)の作出に結びついている.一方,カンゾウの調達を海外からの輸入に頼っているという点では隣国の韓国も同様である.GUを基原とする生薬の品質は優れているものの,栽培時における生育の旺盛さという意味ではGGに劣ることに着目し,我が国とは全く異なる種間交雑による育種が検討され,GGを母方,GUを父方とした多数のF1雑種(交配後の第一代目雑種)が作出されてきた.そこで本稿では,GGとGUの種間交雑により生育と品質がともに安定な新品種の作出に成功したLeeらの論文を紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Yamamoto Y. et al., Shoyakugaku Zasshi, 75, 89-105(2021).<br>2) Lee S. H. et al., Hort. Sci. Tech., 34, 276-286(2017).<br>3) Lee J. H. et al., Kor. J. Medicinal Crop Sci., 29, 110-116(2021).

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 58 (4), 358-358, 2022

    公益社団法人 日本薬学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390573242805252608
  • DOI
    10.14894/faruawpsj.58.4_358
  • ISSN
    21897026
    00148601
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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